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減張切開(筋膜切開) [■外傷処置]
☆☆
decompression incision(fasciotomy)
大饗和憲
(広島大学教授・四肢外傷再建学)

◆病態と診断

A病態

・四肢の筋肉は強靭な筋膜や骨間膜,骨で区切られた区画内に存在する.外傷などを契機に区画内の圧が上昇し,筋や神経,血管が圧迫されることにより障害を生じるのがコンパートメント症候群である.

・外傷による骨折・血管損傷・筋損傷に伴う出血や,外的要因による長時間の局所圧迫(不適切なギプスなど)により生じる.また,阻血後の再灌流で起こってくる血管の透過性亢進による浮腫も原因となる.

・内圧の上昇により区画内の組織の灌流が阻害されると結果として浮腫を引き起こし,さらに区画内圧を上昇させるため,負の連鎖が起こる.

・神経や血管が圧迫されると神経障害や血流障害をきたすが,これが長時間に及ぶと,不可逆性の変化を生じるため早急な対応が必要である.

・筋膜を切開し,内圧の高くなった筋区画を開放するのが減張切開(筋膜切開)である.

B診断

・5つのP,疼痛(pain),知覚鈍麻(paresthesia),蒼白(pallor),麻痺(paralysis),脈拍消失(pulseless)が症状としてみられる.

・これらがすべて揃ってからの診断ではすでに不可逆性変化が始まっているので,その前に診断する必要がある.

・外傷の見た目に比して強い痛みを呈する場合や,区画内の筋の他動伸展痛があればコンパートメント症候群を疑う.

・診断には区画内圧の測定が有用である.特に意識障害のある患者では症状を訴えることができないため,内圧の測定は必須となる.

・内圧の正常値は8mmHg以下であり,内圧が30mmHgを超えた場合,あるいは拡張期血圧との差が30mmHg以内の場合は減張切開の適応となる.

・測定法は,かつては水銀圧力計などを用いて測定していたが,観血的動脈圧測定用のトランスデューサーを用いると簡便である.先端に18G針を装着し,針先まで生理食塩液を満たしたうえで区画内に穿刺し測定する.刺入ごとにフラッシュし,針先が

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