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超音波を用いた循環評価法 [■その他]
sonographic evaluation of patient in shock
鈴木昭広
(自治医科大学附属病院教授・麻酔科)

A背景

 循環不全(ショック)の原因は,①循環血液量減少性,②血液分布異常性,③心原性,④心外閉塞・拘束性と多岐にわたる.その一方で,患者は往々にして外観上5P〔pallor(顔面蒼白),pulselessness(脈拍微弱),perspiration(冷汗),prostration(虚脱),pulmonary insufficiency(呼吸異常)〕を呈する.見た目は同じでもショックの治療方針は全く異なるため,迅速な原因検索が診療の方向性決定に有用である.

 本項では超音波による循環評価法として感度70~100%,特異度95~100%とされるRUSH(rapid ultrasound in shock)examを紹介する.RUSHでは,観察項目として①Pump(心臓の評価),②Tank(血管内容量の評価),③Pipes(脈管系)の3つに着目する.

B超音波の設定

 使用プローブは2つあると望ましく,主にセクタープローブかコンベックスプローブで胸腹腔の観察を,リニアプローブで気胸と静脈系の検索を行う.1つで行いたい場合はマイクロコンベックスプローブが有用である.

C手技の実際

1.Pump

 セクタープローブを使う.ショック患者が描出に適した体位をとることは期待できない.まずは心窩部四腔像から開始し大まかな評価を得る.次いで心尖部四腔像,傍胸骨左室長軸・短軸を含め,観察可能な場所を探す.①心タンポナーデに関して,心嚢液貯留の有無,右室の拡張期虚脱を観察する.次に②心原性ショックに関して左室の収縮性をhyperdynamic,normal,hypodynamicのいずれか,見た目で大別する.最後に,③肺塞栓に関して,右心系のサイズが大きいか,右室・左室の相対的バランス(R>L)を参考に評価し,疑えばPipesの深部静脈血栓症(DVT:deep vein thrombosis)検索も行う.

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