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電解質異常補正法 [■その他]
☆☆
correction of electrolytic imbalance
井上茂亮
(神戸大学大学院特命教授・先進救命救急医学部門)

治療のポイント

・けいれんや意識障害,致死性不整脈やショックなど重篤な臨床症状が出現している電解質異常では,積極的な補正をすみやかに実施する.

・電解質異常の原因探索と補正を同時に進める.

Ⅰ.高ナトリウム(Na)血症

◆病態と診断

・血清Na値が145mEq/Lを超えるものを指す.

・原因の多くは脱水である.大量の発汗や水分摂取不足,嘔吐や下痢,利尿薬の使用などで生じる.

・症状:軽度では,全身倦怠感および口渇が認められる.重症の場合(血清Na値160mEq/L以上)では意識障害とけいれんを認める場合がある.

◆治療方針

 血漿浸透圧,細胞外液量評価,尿中Na濃度の評価を行い,まず細胞外液の過不足を評価する.自由水欠乏量は,(血漿Na濃度-140)/140×体重×係数(男性;0.6,女性;0.5)で算出する.尿からの自由水排泄量は,(血漿Na-尿中Na-尿中K)/血漿Na×1日尿量で算出する.自由水欠乏量に自由水排泄量を合わせたものが,投与すべき自由水量である.

 細胞外液または自由水を輸液し,血清Na値を補正する.急性(24時間以内)の場合は,次の24時間で1~2mEq/L/時で緩徐に補正する.慢性(24時間以上)の場合には,1mEq/L/時でより緩徐な補正を行い,脳浮腫を予防する.

Px処方例 細胞外液が減少している場合1),細胞外液が正常あるいは増加している場合2)を用いる.バイタルサインが不安定な場合は細胞外液の投与を優先する.

1)生理食塩液あるいは半生理食塩液 1回500mL 点滴静注

2)5%ブドウ糖液 1回500mL 点滴静注

Ⅱ.低ナトリウム(Na)血症

◆病態と診断

・血清Na値135mEq/L未満を指す.低Na血症は,電解質異常のなかで最も頻度が高い.水分の過剰またはNaの摂取不足で生じる.背景として,水中毒や心不全,低栄養,肝硬変などが多い.

・診断ではまず,偽性低Na血症で

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