今日の診療
治療指針

血栓・塞栓除去法(フォガティー・カテーテル) [■その他]
☆☆☆
thromboembolectomy(Fogarty catheter)
細野光治
(奈良県立医科大学教授・胸部・心臓血管外科学)

A適応

 四肢動脈の血栓や塞栓による急性動脈閉塞症が適応疾患である.主要徴候は動脈拍動消失,疼痛,蒼白,知覚障害,運動神経麻痺である.不可逆的な状態になるまでのgolden time内が治療の適応となる.golden timeは6時間とされるが,側副血行路の発達により数日となることもあり,虚血時間のみでは決定できない.毛細血管再充満時間(capillary refill time)やドプラ信号,知覚・運動神経障害などを評価し,AHA/ACC(米国心臓協会/米国心臓病学会)ガイドラインのカテゴリーⅡb以下であれば可及的すみやかに治療を行う.カテゴリーⅢでの血流再開はMNMS(myonephropathic metabolic syndrome)をきたし,生命に危機を生じることもあるので肢切断も考慮する.

B手技・方法

1.準備

 検査は必要不可欠なものにとどめるが,時間的に可能であれば血管の状態(動脈瘤や動脈硬化病変など)を把握しておく.診断後は血栓進展防止のためにヘパリン(50~100単位/kg)を静脈注射する.局所麻酔での施行も可能であるが,重症例では血流再開時に高K血症やMNMSを生じる可能性があり,全身麻酔や除細動器・中心静脈ルートを準備する.術中造影も準備する.フォガティー・カテーテルは,ガイドワイヤー用ルーメンがあるものとないものがあり,3~6Fが主に使用される.ガイドワイヤールーメンは,閉塞性動脈硬化病変が高度でカテーテル先端を進めるのが困難な場合や,術中造影,血管内治療の追加に有用である.カテーテルは使用前に生理食塩液でバルーンの状態を確認し,バルーン内部の空気を可及的に除去しておく.

2.手術手技

 皮膚切開は動脈の走行に応じて行い,動脈を剥離し血管テープをかける.ヘパリンを静脈注射し,造影が可能であれば行う.術中造影は推奨事項である.動脈切開予定部位の中枢と末梢で血管

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