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救急医療における感染防御対策 [■その他]
prevention and control of nosocomial infection in emergency room
松嶋麻子
(名古屋市立大学大学院教授・救命救急医療学)

ポイント

・救急外来では,さまざまな患者に対し,事前の情報がほとんどない状態で診療を開始する必要がある.このため,目の前の患者が何らかの感染症を有することを前提に適切な感染防御対策を行う.また,感染症の流行やその対応についても常に情報を収集して対策を準備することも重要である.

A患者の診療前に行う感染防御対策

1.感染対策室との連携

 救急外来における感染防御対策について院内の感染対策室と連携し,事前にルールを定める.新興感染症やパンデミックにより,通常と異なる対応が必要になった場合もすみやかに感染対策室と相談し,状況に応じた感染防御対策が行えるようにする.

2.医療従事者の抗体検査とワクチン接種

 B型肝炎,C型肝炎,結核,ムンプス,麻疹,風疹,水痘などについて,就業前に抗体検査を行い,十分な抗体価がない場合はワクチンを接種することが望ましい.診療上,遭遇する頻度が高いインフルエンザ,新型コロナウイルスについても予防接種を受けることが望ましい.

3.診療動線の確認

 感染症を発症した患者,疑似症患者が来院した場合の動線を事前に確認しておく.通常診療の時間内・時間外で動線が異なる場合には,対応するすべての医療従事者が理解できるように説明や表示を工夫する.

4.発熱外来の設置

 多数の感染症患者が発生した場合は,他の救急患者との接触を避けるように発熱外来の開設を検討する.

B患者の診療で行う感染防御対策

1.感染経路別予防策

 感染症の流行時期では,感染症を疑う症状(発熱,激しい下痢や嘔吐,発疹),家族や学校・職場などでの感染症の流行,海外渡航歴について素早く聴取し,感染症が疑われる場合には,診察の前に患者を隔離する.

 感染症が疑われる患者に対しては,その病原体に応じた方法(感染経路別予防策)で感染防御対策を行いながら診察する.

a.空気感染対策

 適用微生物;結核,麻疹,水痘,新型コロナウイルスなど.

 

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