今日の診療
治療指針

パチシランナトリウム


特 徴

 トランスサイレチン型アミロイドーシス治療薬.

 トランスサイレチンはレチノール結合蛋白質やサイロキシンの運搬や固定にかかわる血漿中に含まれる蛋白である.遺伝子変異によりトランスサイレチン由来のアミロイド線維が形成され,これが末梢神経や心臓などに蓄積し,神経障害や心機能障害,自律神経障害などの症状が現れる.トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーは,遺伝的にトランスサイレチンを作る遺伝子に変異が生じているためにアミロイド線維が主として肝臓で作られ,全身の臓器,組織に蓄積していく進行性の難治性疾患であり,肝移植が有効とされてきた.

 パチシランナトリウムは,トランスサイレチン蛋白質が作られる場である肝細胞に輸送されやすいように脂質ナノ粒子の形で製剤化され,標的となるトランスサイレチンメッセンジャーRNAを分解し,トランスサイレチン蛋白質が肝臓で作られる前に,その産生を阻害するように設計されている.その結果,体内組織でのトランスサイレチンの蓄積を減少させることで,トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの進行の防止や症状の改善をはかる.希少疾病用医薬品として2019年6月に承認された.

商品名

 オンパットロ点滴静注

主症状

 副作用として,infusion reactionが27%にみられ,関節痛,背部痛,頸部痛,筋骨格痛,潮紅,悪心,腹痛,呼吸困難,咳嗽,胸部不快感,胸痛,頭痛,発疹,悪寒,浮動性めまい,疲労,動悸,低血圧,高血圧,顔面浮腫などがあらわれることがある.さらに,0.7%ではあるが,完全房室ブロックを含む房室ブロックの報告がある.

治 療

 infusion reactionが発現した場合には,投与速度を下げるか中断し,副腎皮質ホルモン薬などの治療,あるいは抗ヒスタミン薬,解熱鎮痛薬,抗炎症薬などの適切な対症療法を行う.症状が消失するのを待って

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