今日の診療
治療指針

ロルラチニブ


特 徴

 抗悪性腫瘍薬,チロシンキナーゼ阻害薬.アミノ酸であるチロシンにリン酸を付加する酵素であるチロシンキナーゼは,細胞の増殖や分化に関する細胞内や核内での信号伝達に重要な役割を果たしており,その種類は数多く存在する.遺伝子変異によってチロシンキナーゼが異常に活性化すると,細胞が異常に増殖し,癌が発生・増殖する原因となる.未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)遺伝子が何らかの原因で他の遺伝子と融合してできる特殊な遺伝子であるALK融合遺伝子は,強力な癌遺伝子である.ALK融合遺伝子は,非小細胞肺癌のなかでも腺癌に特異的にみられる遺伝子である.このALK融合遺伝子をもつ肺癌(ALK陽性肺癌)は非小細胞肺癌の患者の数%に存在する.ALK陽性肺癌に対しては,ALKチロシンキナーゼを阻害するALK阻害薬が有効で,数種のALK阻害薬が臨床応用されているが,治療開始後,数年以内に癌細胞が遺伝子変異をきたして薬剤耐性化し,癌が再発する.これらの耐性変異に対して第3世代ALK阻害薬としてロルラチニブが開発された.ロルラチニブは血液脳関門を通過することができる.ALKチロシンキナーゼ阻害薬に抵抗性または不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌を適用症として2018年9月に承認された.

商品名

 ローブレナ錠

主症状

 頻度の高い主な副作用は,高コレステロール血症,高トリグリセリド血症,浮腫,末梢性ニューロパチー,体重増加,疲労,下痢,関節痛などと報告されている.

 重大な副作用として間質性肺疾患,QT間隔延長,中枢神経系障害,膵炎,肝機能障害がある.

治 療

 重大な副作用として間質性肺疾患に対しては,投与を中止するなど適切な処置を行う.QT間隔延長には,休薬,減量または投与を中止.中枢神経系障害が認められた場合にも,休薬,減量または投与を中止.膵炎には投与を中止.肝機能障害には,休薬,

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?