今日の診療
治療指針

急性中毒治療の原則
management of acute poisoning:principles
千葉拓世
(国際医療福祉大学講師・救急医学)

治療のポイント

・急性中毒の治療のメインは支持療法(呼吸・循環などのサポート)である.

・十分な支持療法のうえ①吸収の阻害(活性炭や腸洗浄),②排泄の促進(尿のアルカリ化や血液透析)③拮抗薬の投与,の3つをそれぞれの症例に応じて行う.

◆病態と診断

A病態

・どんな物質であっても,たとえ水のように毒性が低くても,過量に摂取すれば中毒に至る(“The dose makes the poison”,中毒学の父といわれる16世紀スイスの医師パラケルススの言葉).何に,どのように,どれぐらいの時間,どういった背景で曝露したのかを知ることが,その病態把握に重要である.MATTERS(表1)を参考に病歴聴取する.

B診断

・トキシドロームはToxicとSyndromeの2つの言葉の合成語である.中毒患者のバイタルサイン・症状の組み合わせで,どのようなバイタルの異常や症状があれば何の中毒なのか推定できる(表2).トキシドロームは必ず全部の項目を満たすわけではないこと,確定診断ではなく臨床診断に使用することに注意する.

C検査

1.採血

 状況に応じて生化学検査(肝機能・腎機能・電解質など),血算,血糖測定などを行う.アセトアミノフェン血中濃度については初期無症状でその後に肝不全に発展する患者もおり,早期に積極的に測定することが推奨される.そのほか血中濃度が迅速に測定できれば診療に役立つことがある.

2.血液ガス

 アニオンギャップ(AG)の開大する代謝性アシドーシスの有無,一酸化炭素ヘモグロビンの有無,メトヘモグロビン血症の有無,乳酸値の上昇など血液ガスが診療の鍵になることがある.AGが開大する代謝性アシドーシスをみたらCAT MUDPILES(表3)を鑑別に挙げる.

3.心電図

 急性中毒の症例では基本的に全例に行う.特にQRS延長とQT延長を確認する.QT延長は抗精神病薬,抗不整脈薬,マクロライド系やキノ

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