頻度 あまりみない
治療のポイント
・服用直後は意識レベル,バイタルサインが保たれていても急変する事例は多いため,集中治療,全身管理が可能な救命救急センターなどへの搬送を行う.
◆病態と診断
A病態
・有機リンはアセチルコリンエステラーゼ(AchE)に結合し,その作用を阻害する.そのためにシナプスにおいてAch作用は増強し,末梢であればコリン作動性症状,中枢であれば意識障害を筆頭に不穏,頭痛,興奮,けいれんなどの症状を示す.
・コリン作動性症状としては,縮瞳,視力障害,唾液・気道分泌物の増加,徐脈,消化管運動亢進などのムスカリン様症状と,筋力低下や呼吸筋麻痺,散瞳,頻脈,血圧上昇などのニコチン様症状があるが,症状の出現はさまざまである.
・神経剤とよばれる,サリン,ソマン,タブンやVX,ノビチョクなども同様の作用を示すが,症状の程度や致死性は有機リン系農薬に比べ非常に高い.
・発症より数日後に筋力低下や呼吸筋麻痺,脳神経麻痺などを呈す中間症候群や,急性期の症状から回復後に知覚および運動麻痺を生ずる遅発性神経麻痺には注意が必要である.
・カーバメイト中毒は,有機リンより重症化しにくいといわれ,回復も早いとされるが,死亡例も報告されており,決して軽症というわけではない.
B診断
・誤って,もしくは故意に服用したいずれにおいても,飲んだものを確認することが大事である.吐物や呼気中に生臭い有機溶剤臭を認めた場合は,有機リン中毒を疑う.
・血液検査では,ChEの低値が診断の一助となるが,ChEの値と内服量や重症度は相関しないとされる.
・ChE値の回復は,有機リンよりカーバメイトのほうが早いとされる.
◆治療方針
A除染
医療者は防護を徹底したうえで除染を行う.気道の確保と全身状態安定化を優先したのちに消化管除染を検討するが,その際に催吐は禁忌であり,胃洗浄は行わず,活性炭を投与する.
B全身管理
意識状態や循環,
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