今日の診療
治療指針

パラコート・ジクワット中毒
paraquat and diquat poisoning
佐藤弘樹
(札幌医科大学附属病院・救急医学)

頻度 あまりみない

治療のポイント

・パラコート,ジクワットはともにビピリジニウム環を有する除草剤であり,混合製剤(プリグロックスL)が非選択性除草剤として販売されている.

・1986年に規制強化されて以降,中毒件数は減少傾向であるが,致死率は依然として高い.

・解毒剤はなく,対症療法が基本であり,集中治療を要することが多い.

・Proudfootら,またはHartらのノモグラムで死亡する可能性が高ければ緩和ケアを考慮する.

◆病態と診断

A病態

・パラコート含有除草剤は本邦で1965年に発売されて以降,自殺や殺人による中毒事故が多発した.1986年にパラコート高濃度製剤の生産が中止され,パラコート,ジクワットの混合製剤(プリグロックスL,マイゼット)が発売された.主に混合製剤として発売されているため,以下パラコート中毒について述べる.

・パラコート中毒のほとんどは経口摂取によるが,皮膚や粘膜からの吸収による中毒も報告されている.

・パラコートは細胞内に入ると直ちに,レドックス・サイクルとよばれる還元と酸化を繰り返し,細胞を傷害する.

・摂取直後~1日目は激しい消化器症状(悪心,嘔吐,腹痛),口腔~上部消化管粘膜にびらんや潰瘍を形成する.大量摂取時には,多臓器不全が進行し,24時間以内に死亡する.

・摂取後1~4日目は腎不全,肝障害が徐々に進行する.

・摂取3~14日後には進行性肺線維症をきたす.

B診断

・上記症状に加えて,パラコートへの曝露がないか,曝露しうる状況がないか確認する.

青色吐物があればパラコート中毒を疑う.

・尿や飲み残し溶液1mLを用い,0.1%ハイドロサルファイト含有1M水酸化ナトリウム溶液1mLを攪拌すると,青色に変色する(ハイドロサルファイト反応).

・血液や尿からパラコートが検出されれば診断は確定する.

◆治療方針

 経口摂取,経皮吸収にかかわらず,全例入院治療とする.また,解毒剤な

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