頻度 割合みる
治療のポイント
・集学的循環サポートが重要.
・小児では少量でも致死性となりうるため注意.
・腎機能悪化などに伴い,過量服用がなくても血中濃度上昇が起こりうる.
◆病態と診断
A病態
・洞房結節の自動能抑制(陰性変時作用)および房室結節の刺激伝導抑制(陰性変伝導作用)をきたすことで,さまざまな不整脈を引き起こす.
・ジギタリスはK+ の細胞内流入を抑制し,高K血症を起こす.
・β遮断薬の大量服用では受容体に対する選択性は失われ,β1 以外にβ2,β3 アドレナリン受容体も遮断するため,気管支れん縮や陰性変力作用が生じることがある.
・膜興奮抑制作用をもつ薬剤により,QRS/QTc延長,torsade de pointesなどの心室性不整脈が生じることがある.
・脂溶性Ca拮抗薬は,血液脳関門を容易に通過し,昏睡,せん妄,けいれんなど中枢神経症状を生じることがある.
・Ca拮抗薬中毒では,インスリン分泌が抑制され,高血糖となることがある.
B診断
・病歴と症状から診断する.
・血液ガス,生化学検査などと併せて,可能であれば薬物血中濃度を測定する(ジギタリス中毒では,服用6時間以内の血中濃度は服薬量を反映していない可能性があるため慎重に判断).
◆治療方針
1)消化管除染:「急性中毒治療の原則」の項(→)参照.
2)QRS/QTc延長:炭酸水素ナトリウム,マグネシウムを用いる〔→,「環系(三環系および四環系)抗うつ薬中毒,炭酸リチウム中毒」の項参照〕.
A循環器用薬中毒に特異的な治療
1.グルカゴン
β遮断薬中毒に有効.
Px処方例
グルカゴン薬G注 1回2~10mg(0.05~0.15mg/kg)を1~2分で静注.その後同量を繰り返し投与または2~10mg/時で持続静注保外
2.カルシウム製剤
β遮断薬,Ca拮抗薬中毒に有効.ジギタリス中毒では禁忌.
Px処方例
グルコン酸カルシウム(カルチコール薬)注
関連リンク
- 今日の治療指針2023年版/急性中毒治療の原則
- 今日の治療指針2023年版/環系(三環系および四環系)抗うつ薬中毒,炭酸リチウム中毒
- 治療薬マニュアル2023/グルカゴン《グルカゴンG グルカゴン》
- 治療薬マニュアル2023/グルコン酸カルシウム水和物《カルチコール》
- 治療薬マニュアル2023/インスリン ヒト(遺伝子組換え)《ヒューマリンR》
- 治療薬マニュアル2023/ブドウ糖《ブドウ糖 ブドウ糖》
- 治療薬マニュアル2023/合剤 《イントラリポス》
- 治療薬マニュアル2023/メチルチオニニウム塩化物水和物《メチレンブルー》
- 今日の治療指針2023年版/不整脈
- 今日の治療指針2023年版/キニジン硫酸塩水和物
- 今日の治療指針2023年版/環系(三環系および四環系)抗うつ薬中毒,炭酸リチウム中毒
- 今日の治療指針2023年版/環系抗うつ薬中毒,炭酸リチウム中毒
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[4]第1世代三環系抗うつ薬
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[15]ジギタリス
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[16]β遮断薬
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[17]カルシウム拮抗薬
- 新臨床内科学 第10版/(1)ジギタリス中毒