今日の診療
治療指針

解熱鎮痛薬中毒(アセトアミノフェン,アスピリン)
antipyretics,analgesics poisoning(acetaminophen,aspirin)
古閑和生
(沖縄県立中部病院・腎臓内科)

Ⅰ.アセトアミノフェン中毒

治療のポイント

・服用時間と血中濃度を目安にノモグラムを用いて肝障害の可能性を評価する.

・拮抗薬であるN-アセチルシステイン(NAC)はアセトアミノフェン摂取8時間以内に投与を開始する.

◆病態と診断

A病態

・アセトアミノフェンは市販の感冒薬や解熱鎮痛薬に広く含まれており,入手しやすい薬物である.

・吸収後は肝臓でグルクロン酸抱合や硫酸抱合され尿中へ排泄されるが,大量内服によりこれらが飽和状態になりチトクロムP450酵素系による代謝へと促され,中間代謝産物であるN-アセチル-p-ベンゾキノンイミン(NAPQI)が産生され,肝細胞内の蛋白質と結合し,肝障害を引き起こす.

・NAPQIを無毒化するグルタチオンの前駆体であるN-アセチルシステイン(NAC)を投与することでNAPQIの尿中排泄を促進する.

B診断

・感冒薬や解熱鎮痛薬を大量服薬した病歴があればアセトアミノフェン中毒を疑う.

血中濃度を測定して診断が確定する.摂取後4時間以内は血中濃度がピークに達しない場合があることに注意する.

・Rumack-Matthewのノモグラムを用いて肝障害の可能性を評価する.

◆治療方針

 服用後1時間以内なら胃洗浄を考慮.服用4時間以内であれば活性炭を投与する(,「急性中毒治療の原則」の項参照).ノモグラムを参考に血中濃度が治療域に達しているか,150mg/kg以上内服している場合はNACを投与する.NACは摂取8時間以内の経口投与開始が望ましいが,それが難しい場合でも24時間以内であれば投与する.

Px処方例

 アセチルシステイン内用液(ムコフィリン吸入液で代用可) 初回140mg/kgを投与し,以降は70mg/kgを4時間ごとに17回投与(計18回投与)

■専門医へのコンサルト

・急性肝不全を呈した場合には血漿交換や血液ろ過透析法などの治療が必要であり,さらに重篤な場合には肝移

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