頻度 あまりみない
◆病態と診断
A病態
・クレゾールは蛋白質の変性作用をもち,殺菌・消毒薬として用いられてきた.しかし,強い臭気や皮膚に化学熱傷を生じることがあり,使用頻度は減少している.50%クレゾール石鹸液が市販されている.
・50%クレゾール石鹸液の経口致死量は60~120mL,クレゾールの血中濃度が10μg/mL以上で重症,100μg/mL以上で致死的とされる.
・普通石鹸の成分が陰イオン界面活性剤であるのに対し,逆性石鹸は陽イオン界面活性剤であり殺菌・消毒作用をもつ.10%ベンザルコニウム液が市販されている.
・クレゾールや逆性石鹸などの消毒液は消化管や皮膚・粘膜からすみやかに吸収される.
・半減期は不明だが脂溶性で分布容積が大きく,蛋白結合率も高いとされ,血液浄化法は無効である.
・経口摂取により咽喉頭浮腫のほか,腹痛,下痢・嘔吐など消化管の腐食性障害をきたす.また,皮膚・粘膜の化学熱傷および吸収されて中枢神経系や循環器系,肝機能障害など多臓器障害が生じる.
B診断
・消毒薬の曝露や自殺企図による摂取歴を聴取し,特有の臭気や暗色尿,腹痛などの消化器症状,昏睡・けいれん・呼吸停止などの中枢神経症状を認めれば中毒を疑う.
◆治療方針
A全身管理
1.呼吸管理
昏睡・呼吸停止を認めれば,気管挿管・人工呼吸器管理を行う.
2.循環管理
血圧低下やショックに対し,大量輸液やカテコールアミン投与を行う.
3.中枢神経管理
けいれんが持続すればジアゼパムやミダゾラムの投与を行う.
B吸収の阻害
経口摂取では水や牛乳による希釈,活性炭投与を行う.腐食作用のため基本的に胃洗浄は禁忌である.皮膚・粘膜の汚染は大量の水で洗浄する.
C排泄の促進
なし.
D解毒薬・拮抗薬
メトヘモグロビン血症ではメチルチオニニウムを投与する.
文献
1) 上條吉人 : 臨床中毒学. pp323-328, 医学書院, 2009
2) 上條吉人