頻度 あまりみない
ヒ素は半金属に分類され,酸素や炭素などほかの元素と結合して自然環境中に存在する.半導体産業や再発・難治性急性前骨髄球性白血病治療剤などで利用されている.
3価と5価の種々の無機および有機化合物が存在する.3価の無機ヒ素化合物は毒性が強く,気体であるアルシンの毒性が最も強い.
本項では,和歌山毒物カレー事件でも用いられた無機ヒ素化合物の固体による急性ヒ素中毒を中心に説明する.代表的な3価無機ヒ素化合物の三酸化ヒ素は,白色または透明の無味・無臭で塊状物または結晶性粉末である.
◆病態と診断
A病態
・ヒトの致死量は70~300mgとされているが,ヒ素化合物の形態や年齢,性別などに影響される.
・急性ヒ素中毒の正確な機序は明らかではないが,3価はスルフヒドリル基(SH基)との親和性が高く,解糖系のピルビン酸脱水素酵素やTCA回路のα-ケトグルタル酸脱水素酵素などさまざまな酵素を阻害し