頻度 あまりみない
治療のポイント
・代謝物の毒性が問題となる.
・重症例では,解毒・拮抗薬(ホメピゾール,エタノール)で毒性代謝物の生成を抑制しつつ,排泄促進のための血液透析を施行する.
◆病態と診断
A病態
・有毒アルコールとして,重度の毒性を発揮するメタノール(MeOH)とエチレングリコール(EG)が重要である.
1.MeOH
・自動車用ウィンドウォッシャー液,燃料用アルコールなどに含有される.
・MeOHは浸透圧ギャップ(OG:osmolal gap)を開大させる.MeOHは,ホルムアルデヒド(半減期が短く蓄積しない),その後ギ酸へと代謝され,アニオンギャップ(AG)開大性代謝性アシドーシスが生じる.ギ酸は強い毒性を有する.
・中毒症状として,初期に消化器症状,摂取後6~30時間で眼症状(視覚異常,失明),中枢神経症状,呼吸・循環器症状が生じる.
・経口摂取によるヒトの中毒量は個人差が顕著である.10~15mLで失明の危険性.致死量は1.2mL/kg.
2.EG
・エンジンの不凍液,ブレーキフルード,保冷剤などに含有される.
・EGはOGを開大させる.EGは,グリコアルデヒド,その後グリコール酸,グリオキシル酸,シュウ酸へと代謝され,AG開大性代謝性アシドーシスが生じる.これらの代謝物は強い毒性を有する.
・中毒症状は3段階の経過をとり,摂取後30分~12時間で消化器症状,中枢神経症状,12~24時間で呼吸・循環器症状,24~72時間で腎障害が生じる.
・経口摂取によるヒトの致死量は1.4mL/kg.
B診断
・MeOH,EGに曝露した可能性がある患者にOG,AG開大を認める場合,それらの中毒を疑う.
・MeOH,EG,それらの代謝物の血中濃度を測定できれば診断は確定するが,迅速に測定できる施設はほとんどない.
◆治療方針
呼吸・循環管理をはじめとした全身管理を行う.重度の代謝性アシドーシスには炭酸水素ナ
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