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◆病態と診断
A病態
・エタノールはお酒のみならず,香水や工業用品,医薬品にも使用されている.
・エタノール中毒の多くは飲酒によるものであり,一般的には用量依存的に症状が出現する.
・普段の摂取量および代謝能力に影響を受けるため,中毒量は個人差が大きく,一般的な血中濃度での症状を参考に治療を行う必要がある.
・血中濃度による代表的な症状:①50~100mg/dLで運動失調,感覚鈍麻,②100~200mg/dLで言語不明瞭,判断力低下,傾眠,③350mg/dL以上で昏睡,低体温,呼吸抑制,など.小児はより少量で意識障害を起こす.
B診断
・臭気・飲酒歴・曝露歴により疑う.
・血中アルコール濃度が測定できる施設は限られており,通常は浸透圧ギャップにより推定アルコール血中濃度を計算する.エタノール以外の中毒物質がなければ,推定血中エタノール濃度(mg/dL)がわかる(浸透圧ギャップに乗ずる4.6は諸説あり実測より高い数値になるといわれている).
1)浸透圧ギャップ=浸透圧-〔2Na(mEq/L)+BUN(mg/dL)/2.8+グルコース(mg/dL)/18〕
2)推定エタノール濃度=浸透圧ギャップ×4.6
◆治療方針
輸液量に比例した症状の改善は見込めない.
エタノールについては経口摂取すればすみやかに胃内で吸収されるので,活性炭投与は効果が乏しい.揮発したエタノールは肺から吸入され,液体では皮膚からも吸収される.急性血液浄化が必要な場合はほとんどなく,たいていは輸液と全身管理により症状改善を待つ.解毒・拮抗薬はない.意識障害や呼吸不全の状況であれば,すみやかに気道と静脈路を確保するなど全身管理により呼吸循環の安定化をはかる.人工呼吸器の使用を躊躇しない.
アルコールの長期摂取,低栄養の可能性が高い場合,または意識障害が強い場合は,ビタミンB1 欠乏を考慮し,フルスルチアミン(アリナ