今日の診療
治療指針

タバコ中毒(誤飲・誤食)
tobacco ingestion
高橋 功
(総合病院国保旭中央病院・救命救急センター長(千葉))

頻度 割合みる

治療のポイント

・小児はほとんど無症状で処置は不要である.

・2~3時間(最大4時間)の経過観察を行う.

・自殺や認知症患者は大量摂取の可能性があり注意が必要で,重症度に応じた中毒治療を行う.

・患者・家族には水を飲まないように指導する.

◆病態と診断

A病態

ニコチンによる中毒症状(消化器,呼吸器,循環器,神経系)が主体.

・主症状は悪心嘔吐,腹痛,下痢,めまい,頻脈,顔面蒼白,不機嫌など.

・重症例は血圧上昇,不整脈,呼吸抑制,不穏,意識障害やけいれんなどが出現する.

B診断

小児中毒(誤飲・誤食)の原因として上位を占める.

・本人の申告,親の目撃情報,口腔内所見から診断する.

・摂取時間,嘔吐の有無,タバコの種類や摂取量,吸殻の溶解した液体誤飲の有無などの情報収集を行う.

◆治療方針

A考慮すべき事項

1)ニコチン中毒量と致死量の誤解:摂取量とそれから推定される血中濃度や中毒量,致死量には根拠がない.

2)日本小児科学会指針の無処置基準である2cm以下も再検討が必要.

3)胃内ではニコチンは吸収されにくい.

4)小児では実際には摂取量も少なく嘔吐していることも多い.

5)死亡例の報告はない.

6)教育的胃洗浄は無意味で,むしろ合併症のリスクを高めるため実施しない.

7)水はニコチンの溶出を促進するので注意が必要.

B具体的対応

 小児では無症状から軽症例は胃洗浄を行わず,経過観察のみ行う.経過観察は2~3時間でよいが,4時間後に症状(嘔吐)が出現した報告例がある.小児でも明らかな大量摂取や有症状例では,成人中毒例と同様に活性炭の投与など重症度に応じた治療を実施する(,「急性中毒治療の原則」の項参照).

 新型タバコも対応は同じだが,口への入れやすさや液体型など種々あり,注意が必要である.

■患者説明のポイント

・タバコを含めた小児中毒の大半は家庭内で発生し,小児事故の特徴を踏まえて,保管方法や親の行動

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