今日の診療
治療指針

一酸化炭素中毒
carbon monoxide poisoning
宮内雅人
(高知大学准教授・災害・救急医療学)

頻度 割合みる〔一酸化炭素(CO)中毒はわが国の中毒死の原因物質の第1位を占め,年間2,000人を超える.災害時に件数が増える傾向がある〕

治療のポイント

・COは無色無臭の気体で,中毒症状も多岐にわたり,原因不明の意識障害で来院する場合があり診断には注意を要する.

・心筋に対して親和性が高く心筋障害をきたすことがあり,心機能評価は必須である.

・急性症状が回復後,数日から数週間後に症状が再燃あるいは増悪する遅発性脳症(DNS)の経過をとる場合があり,高次脳機能検査を施行するなど注意深い観察が必要である.

◆病態と診断

A病態

・COはヘモグロビン(Hb)と容易に結合し,カルボキシヘモグロビン(COHb)を形成する.酸素よりも親和性が約200倍高いことによりHbへの酸素の結合を阻害して酸素輸送を妨げ,組織への酸素放出も妨げる.チトクロームCにも結合し,ミトコンドリアの電子伝達系機能を低下させる.酸素需要が高い神経細胞や,COと親和性の高いミオグロビンをもつ心筋細胞に強い影響を及ぼす.

・急性期では頭痛,めまい,吐き気,胸痛,全身倦怠感などさまざまな症状を呈する.皮膚の鮮紅色は顕著でない場合もある.中等症では傾眠,知覚障害,重症では錯乱,けいれん,昏睡,不整脈などをきたし最終的に心停止に至る.

B診断

・COは有機物の不完全燃焼から生じる副産物であり,自動車や発電機からの排ガス,火災からの発生があり,固形燃料である練炭は暖房だけでなく自殺企図の手段に使用されることがある.現病歴を含めた曝露歴は大切だが,曝露歴がわからない場合などは鑑別診断の1つとして頭に入れておく.

・血中のCOHb濃度は曝露時間や曝露濃度などさまざまな因子に影響されるため症状や予後とは必ずしも相関しない.喫煙者ではCOHbが10%以上,非喫煙者で3%を超える場合はCO中毒を疑う.

・動脈血液ガス検査はCOHb濃度だけでなく代謝性ア

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