今日の診療
治療指針

天然ガス・プロパンガス中毒
LNG(liquefied natural gas)and LPG(liquefied petroleum gas)poisoning
中村光伸
(前橋赤十字病院・高度救命救急センター長)

頻度 あまりみない

治療のポイント

・天然ガス・プロパンガス中毒の本態は低酸素血症である.

・中枢神経症状を伴わない軽症例では,新鮮な空気下での自発呼吸を行う.

・中枢神経症状を伴う重症例では,気道確保や換気補助が必要である.

・心電図モニタリングを行い致死性不整脈の出現に注意する.

・不完全燃焼の際には一酸化炭素(CO)が発生するためCO中毒に注意が必要である.

◆病態と診断

A病態

・天然ガスは,メタンを主成分とする.そのほかにエタン,プロパン,ブタンを数%含有する.

・プロパンガスは,プロパンとブタンを主成分とする液化石油ガス(LPG)のうち,主成分がプロパンとなるものを指す.

・天然ガス,プロパンガスともに無臭であるが,ガス漏れの際に認知できるように付臭されている.

・都市ガスは空気よりも軽く,プロパンガスは空気より重い.

・天然ガス,プロパンガスは両者とも,吸入によりすみやかに吸収されるが,そのほとんどが未変化体として呼気中に排泄される.いずれもそれ自体の毒性は低いとされているが,高濃度の吸入では,中枢神経抑制作用心筋感受性亢進作用が出現する.

・最も問題となる毒性は,吸入した際に空気と置換するため引き起こされる低酸素血症である.

B診断

・吸入の事実を同定することは難しい.情報収集の際に,気密性,使用ガスの種類,ガス臭の有無,曝露時間,不完全燃焼の有無を聴取する.

・曝露が起こる状況として,①器具や配管の異常,②小児の誤用などによるガス漏れ,③青少年による遊興目的や自殺企図による吸入がある.

・血液ガス検査結果および乳酸値により低酸素状態の評価,COHb値により不完全燃焼に伴う一酸化炭素曝露の程度を評価できる.

・致死性不整脈の出現に備え,心電図モニタリングを行う必要がある.

・液化ガスによる凍傷,引火による気道熱傷などを合併することがある.

◆治療方針

 現場での対応は,新鮮な空気下に患者を移動するこ

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?