頻度 あまりみない
治療のポイント
・キノコ中毒の多くが消化器症状を呈する.
・日本で最も多いのはツキヨタケ,致死性が高いのはドクツルタケとシロタマゴテングタケ.
・解毒拮抗薬はなく,対症療法および全身管理を行う.
・摂取後6時間経過して症状を生じた場合は,毒性の高いドクツルタケとシロタマゴテングタケを念頭におき高次医療施設への搬送を検討する.
◆病態と診断
A病態
・キノコ中毒は生育時期に関連して9~10月に多い.
・症状別に消化器障害型(ツキヨタケ,クサウラベニタケ),神経障害型(テングタケ),原形質毒性型(ドクツルタケ)に分類され,消化器障害型が過半数を占める.
・ドクツルタケとシロタマゴテングタケは白色の傘と柄をもつ猛毒キノコである.消化管から吸収されたペプチド毒が蛋白合成を阻害し,消化器症状に続いて肝障害,腎障害,神経症状をきたし多臓器不全を引き起こす.
・日本ではツキヨタケによるキノコ中毒事故が最多である.摂取後30分~3時間で消化器症状を生じ大量の水様性下痢を引き起こすが,3~4時間でほとんどの症状は消失する.
B診断
・キノコ摂取歴のある患者に消化器症状を生じる場合はキノコ中毒を疑う.
・摂取後6時間の潜伏期間をおいて消化器症状を生じる場合はドクツルタケかシロタマゴテングタケによる中毒を疑い,24~48時間後に肝障害や腎障害が発生すれば診断は明らかである.
・食べ残しや吐物内の形態から判断できることもある.
◆治療方針
治療の原則は対症療法で,ドクツルタケかシロタマゴテングタケ中毒が疑われる場合は急性肝不全・腎不全への対応が可能な医療機関へ搬送する.
Aドクツルタケ,シロタマゴテングタケ
1.全身管理
入院とし,輸液で水分の喪失を補い血圧を維持する.
急性腎不全では持続腎代替療法を行う.急性肝不全が生じれば血漿交換などの対症療法を行うが,肝不全から回復しない患者では肝移植も考慮される.