頻度 あまりみない
治療のポイント
・摂取1時間以内であれば胃洗浄や活性炭の投与を考慮する.
・解毒薬はないため,支持療法を行う.
・重症の場合は,必要に応じて人工呼吸管理,昇圧薬を使用する.
◆病態と診断
A病態
・フグの卵巣,肝臓,腸,皮などに含まれるテトロドトキシンにより引き起こされる.
・テトロドトキシンは,加熱調理をしても毒性が残存し,Na+ チャネルの遮断により,神経細胞や筋細胞の機能を阻害する.
B診断
・特異的な臨床検査は存在しないため,診断は病歴と症状に基づく.
・摂取後数分以内に発症し,4~24時間以内に脱力,麻痺(呼吸筋麻痺含む)などをきたす.
・テトロドトキシンの摂取量が多いほど重症になる.
・重症度:Grade1~4に分類される.
・Grade1:知覚異常や口腔周囲のしびれ,消化器症状(悪心,嘔吐,腹痛,下痢),発汗,頭痛.
・Grade2:顔面のしびれ,不明瞭な言語,軽度の運動麻痺,協調運動障害(反射は正常).
・Grade3:全身弛緩性麻痺,失声,呼吸不全,瞳孔の固定・散大(意識あり).
・Grade4:低酸素,徐脈,低血圧,不整脈,意識障害を伴う重篤な呼吸不全.
◆治療方針
解毒薬はない.毒が尿中に排泄されるまで,支持療法を行う.適切な全身管理がなされれば多くの患者の予後は良好で数日で退院可能であるが,麻痺などの状態により入院が長引く場合もある.
A吸収の阻害,排泄の促進
予後改善のエビデンスはないが,毒の重篤性などから,摂取1時間以内であれば胃洗浄や活性炭の投与を考慮する(食後であることが多く,誤嚥のリスクに十分注意).腎臓病の患者には,血液透析が有効である場合がある.
B全身管理
呼吸不全に対しては気管挿管・人工呼吸管理を,自律神経系の障害による血圧低下に対しては昇圧薬を使用する.循環・呼吸器系の支持療法がきわめて重要である.麻痺をきたしても意識があることが多く,適切な