今日の診療
治療指針

節足動物刺症(ハチ,セアカゴケグモなど)
arthropod sting
高平修二
(埼玉医科大学准教授・救急科)

頻度 割合みる

治療のポイント

・皮疹にはステロイド外用薬を塗布し,瘙痒には抗ヒスタミン薬を内服する.

・ハチ刺症など,アナフィラキシーを生じた場合,アドレナリン筋肉内注射(成人0.3mg,小児0.15mg)投与.必要に応じてステロイドおよびH1,H2 受容体拮抗薬を追加投与する.

◆病態と診断

・節足動物とは,昆虫類・甲殻類・クモ・ムカデなど.唾液の組成は多様で,咬傷によって生じる病変も,丘疹から腫脹や激痛を伴う潰瘍まで,多岐にわたる.

・節足動物による咬傷は,多数の細菌やウイルスを媒介する可能性がある.

・診断が困難なこともあり問診により虫刺症の可能性,またアレルギーの有無を確認する.

A刺咬によるもの:ハチ,アリ,クモ,ムカデ

・刺咬部に一致した激痛を伴う浮腫の強い紅斑がみられる.クモ,ムカデでは2個の咬創.

1.ハチ

・スズメバチ類,アシナガバチ類は攻撃性が高く危険.

・ミツバチも含め刺されたあとのアナフィラキシーに注意.

2.ヒアリ

・2017年6月,日本で初めて確認され特定外来生物に指定されている.

・刺咬により熱感と疼痛を感じる.その後,発赤し皮疹を伴う.

・アナフィラキシーを起こすことがある.

3.セアカゴケグモ

・オーストラリア原産の毒グモで,α-ラトロトキシンとよばれる神経毒を有す.

・咬まれたときの症状として,時間とともに痛みの強さと範囲が増大する.

・セアカゴケグモ抗毒素血清は,近年は入手困難な状態である.

B吸血によるもの:カ,ブユ,ノミ,ダニ

・いずれも強い瘙痒を伴う.重症例はまれ.

1.カ

・吸血直後に中心に膨疹を伴う紅斑が出現する.

2.ブユ

・四肢など露出部に好発.中心に水疱や出血を伴う浮腫性紅斑,腫脹が数日間続くことが多い.

C接触によるもの:ドクガ

・毒針毛の刺入部に一致した浮腫性紅斑から始まり,紅色丘疹となる.

・庭仕事のあとに多く,瘙痒が強い.

◆治療方針

 石鹸を用い流水で洗浄.針が残ってい

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?