今日の診療
治療指針

ウイルス性出血熱 [■1類感染症]
viral hemorrhagic fever(VHF)
掛屋 弘
(大阪公立大学大学院教授・臨床感染制御学)

頻度 あまりみない(わが国では,きわめてまれ)

ニュートピックス

・2020年10月,エボラウイルス病(EDV)に対するモノクローナル抗体製剤が治療薬として米国FDAで承認された.またEVD患者との濃厚接触後の感染予防にモノクローナル抗体製剤の有効性が報告されている.

治療のポイント

・有効性の確立した抗ウイルス薬はなく,臓器不全に対する早期からの支持療法が予後改善に重要である.また,医療従事者の感染リスクを考慮した感染対策が求められる.

◆病態と診断

A病態

ウイルス性出血熱(VHF:viral hemorrhagic fever)は,RNAウイルスであるアレナウイルス(ラッサ熱:LF,南米出血熱:アルゼンチン・ブラジル・ベネズエラ・ボリビア出血熱),ブニヤウイルス(クリミア・コンゴ出血熱:CCHF,重症熱性血小板減少症候群:SFTS),フィロウイルス(エボラウイルス病:EVD,マールブルグ出血熱:MHF),シンノンブレウイルス(ハンタウイルス肺症候群:HPS),フラビウイルス(黄熱,デング熱)などを病原体とする急性の発熱性疾患群である〔デング熱,SFTSはそれぞれ「デング熱,チクングニヤ熱」の項(),「重症熱性血小板減少症候群」の項()を参照〕.

・SFTSを除き基本的にわが国には存在せず,VHFは主に西アフリカ(EVD,LF)から中央アフリカ(EVD,CCHF),HPSは南米大陸での発生報告が多い.

・動物(齧歯類,コウモリなど)由来感染症であるが,患者の血液や体液に接触して感染する.

・致死率は5~30%(CCHF,LF),50~90%(EVD)と非常に高い.

・一定の潜伏期間ののちに,発熱,倦怠感,頭痛,筋肉痛,咽頭痛などにて発症し,その後嘔吐・下痢などの消化器症状を伴い,全身状態の悪化につながる.

・発症7日前後の時期に臓器不全の徴候が出現しやすい.EVDでは腎障害による乏尿,H

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