今日の診療
治療指針

ポリオ(急性灰白髄炎) [■2類感染症]
poliomyelitis
山岸由佳
(高知大学教授・臨床感染症学講座)

頻度 あまりみない

治療のポイント

・治療は対症療法である.

・予防はワクチン接種である.

◆病態と診断

A病態

・ポリオ(急性弛緩性麻痺)はポリオウイルスによる感染症で,原因となるポリオウイルスはピコルナウイルス科エンテロウイルス属のC群に分類され,1型,2型,3型の3つの血清型が存在する.本ウイルスはプラス鎖のRNAをゲノムにもつ一本鎖RNAウイルスで,エンベロープを有しない.

・野生株ポリオウイルスは2型が1999年に,3型が2012年に地球上から消滅したと考えられており,現在1型のみ存在する.

・野生株ポリオウイルス以外にワクチン株ポリオウイルス(経口生ポリオの成分),ワクチン由来ポリオウイルス(遺伝子の変異したワクチン株由来のポリオウイルス)の3種類がある.

・ヒト以外の生物には感染しない.感染経路は糞口感染で経口的にヒトの体内に入り,咽頭や小腸の粘膜で増殖し,その後に脊髄を中心とする中枢神経系へ達し,これらを破壊することによって,ポリオとしての症状を生ずる.多くは不顕性感染で,発症率は感染者の0.1~0.2%程度である.

・症状の経過は色々で,不全型(発熱,頭痛,咽頭痛などの感冒様症状が出現し消失),非麻痺型(感冒様症状後の無菌性髄膜炎),前駆症状を伴う麻痺型〔感冒様症状後手足の非対称性弛緩性麻痺(AFP:acute flaccid paralysis)が出現する.麻痺の前に深部腱反射の減弱ないし消失,筋萎縮などがみられる場合がある〕,前駆症状を伴わない麻痺型(突然下肢を中心に麻痺が出現)がある.また麻痺型(大部分が脊髄型)では,一部に球麻痺を合併し嚥下,呼吸障害などがみられる.

ポストポリオ症候群(PPS:post-polio syndrome)は,ポリオ罹患者において,安定した状態が数十年続いたのちに,筋萎縮,筋力低下,疲労感,歩行障害などの新たな身体症状が出現する病態である.

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?