頻度 あまりみない
治療のポイント
・診断した医師は,直ちに最寄りの保健所へ届け出る.
・気道閉塞と心筋炎に注意し観察する.
・エリスロマイシンまたはペニシリンによる抗菌薬治療と抗毒素治療を行う.
◆病態と診断
A病態
・ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)による感染症とジフテリア毒素による疾患.
・ヒト-ヒト感染.飛沫感染,接触感染.潜伏期は2~5日間.感染後の発症率は約10%.致死率は5~10%.
・発熱,咽頭痛,頸部リンパ節腫脹(牛頸)に続き,咽頭,扁桃に厚い偽膜を形成する.喉頭ジフテリアでは嗄声・犬吠様咳嗽(真性クループ)が特徴的.偽膜・出血・腫脹により気道閉塞を起こす.皮膚ジフテリアは灰色の偽膜を伴う皮膚潰瘍.毒素による心筋炎や神経炎が起きる.
・予防接種により日本の発症状況は激減し,1999年を最後に発生報告はない.
B診断
・咽喉頭に難治性の白苔があり,グラム陽性桿菌が検出された場合,本症を疑う.
・病変部位からの菌の分離.
・PCR法によるジフテリア毒素遺伝子の検出.
・ジフテリア毒素非産生性の菌は届出の対象ではない.
・ジフテリア類似の症状を引き起こす菌として,ウルセランス菌(C. ulcerans)があるが,届出の対象ではない.ペットや家畜からの感染が多い.
◆治療方針
診断した医師は,直ちに最寄りの保健所に届け出る.感染拡大の防止が必要な場合は勧告入院となる.ジフテリアを疑えば,個室管理で飛沫予防策,接触予防策を開始し,臨床診断で抗菌薬投与を開始する.気道閉塞や心筋炎の危険がある場合は,気道確保や心電図モニターが必要.気道病変や牛頸の場合は,抗菌薬と並行して抗毒素を投与する.抗菌薬は2週間継続する必要がある.抗菌薬終了後,24時間あけて2回の培養検査により陰性確認を行い,個室解除する.
A抗菌薬
エリスロマイシンあるいはペニシリン系薬が第1選択薬である.
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