頻度 あまりみない(年間約20~40例)
GLJAID/JSC感染症治療ガイドライン2019―腸管感染症―
ニュートピックス
・フルオロキノロン系に加えセフトリアキソンにも感受性のない広範囲薬剤耐性(XDR:extensively drug-resistant)腸チフスが,パキスタン,米国など海外から報告されている.
・薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書(2021年)によると,2020年に検出されたチフス菌の15%にセフォタキシム耐性が認められており,日本国内でも第3世代セフェム系抗菌薬耐性率の上昇が懸念されている.
・腸チフスワクチンは種類を問わず国内未承認であるが,海外では従来の経口弱毒生ワクチン,Vi莢膜多糖体ワクチンに加え,比較的新しい結合型ワクチン(Vi-tetanus toxoid typhoid conjugate vaccine)も使用されている.
治療のポイント
・特異的な症状に乏しく初診時には診断が困難であるため,渡航地に応じてマラリアなどの鑑別診断を検討しつつ,腸チフス・パラチフスに対する経験的治療を行う.
・適切な抗菌薬開始後も5日間前後は発熱が持続する場合がある.
◆病態と診断
A病態
・病原体は腸内細菌科サルモネラ属に分類されるチフス菌(Salmonella enterica serotype Typhi),パラチフス菌(Salmonella enterica serotypes Paratyphi A,B,C)である.これら以外のサルモネラ属菌は非チフス性サルモネラ(nontyphoidal Salmonella)とよばれ,国内でも一般的な食中毒の起炎菌である.
・主に海外渡航先で汚染された水や食べ物を摂取し感染するが,国内での散発的感染や食中毒による集団感染が報告されている.
・症状は発熱,頭痛,全身倦怠感など非特異的であり,下痢を伴わない場合がある.
・消化管穿孔の
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