頻度 あまりみない
治療のポイント
・ボレリア感染症で重要なのは回帰熱とライム病である.ともにわが国では4類感染症に指定されている.
・回帰熱ではテトラサイクリン系,マクロライド系などが有効である.
・ライム病ではドキシサイクリン,アモキシシリンなどが有効である.
Ⅰ.回帰熱
◆病態と診断
A病態
・回帰熱は,シラミやダニによって媒介されるスピロヘータ科・ボレリア属の細菌感染症である.シラミやダニの体液や唾液・排泄物中の病原体が,ヒトの皮膚や粘膜から体内に侵入して感染する.病原体として,シラミ媒介性はBorrelia recurrentisの1種類であるが,ダニ媒介性はB. duttoniのほか十数種類のボレリア属が存在する.ボレリア属に感染したシラミやダニは終生感染力を持つ.
・潜伏期間は4~18日(平均7~8日)と考えられている.
・臨床症状としては,頭痛,筋肉痛,関節痛を伴う高熱(~40℃)が3~6日持続し,その後突然解熱する.しかし,解熱7~9日後に2回目の発熱が出現する.無治療であれば発熱期と無熱期を数回繰り返す.
B診断
・確定診断には病原体の検出が必要であり,発熱期の血液培養検査が有用である.
◆治療方針
テトラサイクリン系,マクロライド系などが有効である.妊婦や小児の場合はマクロライド系が推奨される.抗菌薬治療によりJarisch-Herxheimer反応(発熱,心拍数増加,呼吸数増加,血圧低下など)が高率に認められる.2時間以内に出現し,あらかじめステロイドを投与しても予防できないとされている.
Aシラミ媒介性回帰熱
Px処方例 下記のいずれかを用いる.
Bダニ媒介性回帰熱
Px処方例 下記のいずれかを用いる.
関連リンク
- 治療薬マニュアル2023/テトラサイクリン塩酸塩《アクロマイシン》
- 治療薬マニュアル2023/エリスロマイシンステアリン酸塩《エリスロシン》
- 治療薬マニュアル2023/ドキシサイクリン塩酸塩水和物《ビブラマイシン》
- 治療薬マニュアル2023/アモキシシリン水和物《サワシリン パセトシン ワイドシリン》
- 治療薬マニュアル2023/セフトリアキソンナトリウム水和物《ロセフィン》
- 今日の治療指針2023年版/リケッチア感染症(つつが虫病,日本紅斑熱) [■4類感染症]
- 今日の治療指針2023年版/発疹チフス [■4類感染症]
- 今日の治療指針2023年版/動物より伝播される感染症(特にイヌ,ネコ,ウサギ,ネズミに咬まれたとき) [■その他]
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/猩紅熱,その他の溶連菌感染症
- 新臨床内科学 第10版/【8】ライム病
- 今日の診断指針 第8版/ボレリア感染症(回帰熱・ライム病)
- 今日の小児治療指針 第17版/リケッチア感染症,Q熱
- 今日の小児治療指針 第17版/A群レンサ球菌感染症(劇症型感染を含む)