今日の診療
治療指針

Q熱 [■4類感染症]
Q fever
飯沼由嗣
(金沢医科大学教授・臨床感染症学)

頻度 あまりみない(感染症法で報告された件数は,2012~2021年の10年間で計13件)

治療のポイント

・自然治癒傾向の強い疾患であるが,確定診断あるいは疑診例では,積極的な治療を行う.

・第1選択薬は,テトラサイクリン系薬である.

・偏性細胞内寄生細菌であり,β-ラクタム系薬は無効である.

◆病態と診断

A病態

・Q熱はCoxiella burnetiiによる人獣共通感染症である.C. burnetiiは偏性細胞内寄生細菌であり,当初リケッチア科とされたが,現在はコクシエラ科細菌に分類されている.

・本菌を保有するウシ,ヒツジ,イヌ,ネコなどの家畜やペットなどの動物の排泄物がエアロゾル化し,それを吸入することにより感染する.

・急性Q熱は,2~3週間の潜伏期のあと,発熱,頭痛,筋肉痛,全身倦怠感などのインフルエンザ様症状から,肺炎,肝炎,不明熱など多彩な症状を示す.

・本菌を大量に含む胎盤や羊水を原因とするヒトの集団感染が報告されているが,ヒト-ヒト感染はきわめてまれである.

・慢性型では心内膜炎などの報告がある.また,慢性疲労症候群との関係も注目されている.

B診断

・動物との接触歴や,ほかの病原体が検出されない急性症状,あるいは慢性症状にてQ熱を疑う.

・病原体分離は一般検査室では困難であり,PCR法あるいは間接蛍光抗体法(数週間間隔のペア血清による抗体価の4倍以上の上昇など)で診断する(ともに保険適用外).

◆治療方針

 Q熱の臨床的診断は困難なことが多く,確定診断に至らない例も多い.原因菌不明の非定型肺炎や肝炎,不明熱などでQ熱が疑われる場合には,治療を開始し,検査を進めていく.弁膜症や心筋症など慢性型発症リスクの高い基礎疾患を有する症例では,心臓エコー検査が推奨される.

Px処方例 以下のいずれかを用いる.積極的治療により慢性型への移行を防ぐことが重要である.

1)ドキシサイクリン(ビブラマイ

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