頻度 あまりみない
治療のポイント
・地域性のある感染症であり浸淫地域では本症を疑うことが重要である.
・多臓器不全例では,院内感染に注意しながら集学的な治療を行う.
◆病態と診断
A病態
・SFTSは,フェヌイウイルス(旧ブニヤウイルス)科バンダウイルス(旧フレボウイルス)属に分類されるSFTSウイルス感染による感染症である.マダニが媒介する感染症であるが,本ウイルスに感染したイヌやネコなどからの感染例や,院内感染としてヒト-ヒト感染例も報告されている
・2013年以降,2021年7月28日までに全国で641例の報告があり,西日本に多い.また,診断報告時の死亡者数は全例50歳以上で計80例が報告され,死亡率は12.5%と高い.ただし,治療に反応しない例も多いため,全経過後の真の死亡率は12.5%より高いことが推測される.
・マダニ咬傷から発症までの潜伏期間は5日~2週間で,38℃以上の発熱,消化器症状,頭痛,筋肉痛,意識障害,リンパ節腫脹,出血症状などがみられ,重症例では多臓器不全に陥る.
B診断
・検査所見は,血小板数減少,白血球数減少,AST,ALT,LDH,CKの上昇,腎障害,蛋白尿などがみられる.血球貪食症候群の合併も多い.高熱にもかかわらず,2次感染がない限りCRPの上昇がみられないのが特徴である.
・マダニが媒介する感染症であるが,マダニ咬傷の刺し口がみられないことも多い.また,体調不良の動物との接触歴も聴取し診断の補助とする.
・確定診断は血液からのSFTSウイルスの分離,あるいは遺伝子学的検査による.
◆治療方針
有効な抗ウイルス薬による特異的な治療法は確立されておらず,対症療法が主体となる.抗ウイルス薬であるリバビリンや,過度な炎症の抑制や血球貪食症候群に対してステロイドが使用されることはあるが,有効性は確立されていない.
ファビピラビルは動物実験で有効性が示され臨床研究が実施さ