頻度 あまりみない
GL蚊媒介感染症の診療ガイドライン(第5版)(2019)
治療のポイント
・デング熱,チクングニヤ熱いずれも特異的な治療はまだない.したがって輸液を中心とした対症療法が治療の柱となる.
・一般的に予後は良好であるが,デング熱ではまれに重症デングとよばれる病態に至ることがある.特に,過去にデング熱に罹患したことのある者が別の血清型のデングウイルスに感染した場合,初回の感染時よりも重症化のリスクが高くなる.
◆病態と診断
A病態
・デング熱とは,フラビウイルス科フラビウイルス属デングウイルスによる蚊媒介性感染症である.チクングニヤ熱はトガウイルス科アルファウイルス属チクングニヤウイルスによる感染症である.どちらも主にAedes aegypti(ネッタイシマカ)とAedes albopictus(ヒトスジシマカ)によって媒介される蚊媒介感染症である.
・熱帯・亜熱帯地域で流行しており,本邦では主に輸入感染症として診断されるが,2014年には本邦でもデング熱がアウトブレイクし160人の感染者がみられた.
・デング熱の潜伏期は3~7日であり,発熱は5~7日続くのが典型的な経過である.発熱以外には頭痛,関節痛,皮疹の頻度が高く,筋肉痛,下痢,嘔気・嘔吐といった症状がみられることもある.
・チクングニヤ熱は,典型的には2~4日間の潜伏期間ののちに高熱と強い倦怠感で発症し,発熱後すぐに強い関節痛,筋肉痛が出現する.その他の症状としては,頭痛,皮疹,リンパ節腫脹など,多彩な症状が出現しうる.最も特徴的なのが関節痛で,大抵は対称性に複数の末梢関節を含むことの多い多関節痛であり,指の関節や,手関節,足関節が多く,90%の患者で四肢の関節が影響を受け,腫脹がみられることも一般的である.急性症状は1~2週間以内に改善するが,関節痛は数か月~数年間持続することもある.
B診断
・デング熱を診断する方法は主