頻度 あまりみない
治療のポイント
・致死的疾患であるため,診断したらすみやかに治療(テトラサイクリン系薬)を開始する.
◆病態と診断
A病態
・発疹チフスはリケッチアに分類される偏性細胞内グラム陰性球桿菌(Rickettsia prowazekii)による感染症である.
・シラミ媒介性の発疹性疾患で,コロモジラミやアタマジラミが媒介する.
・感染経路は,主にシラミの体液やその糞便で刺咬部位や傷口が汚染されることによるが,エアロゾルとなったシラミの糞便を大量に吸入することにより,経気道的に感染する場合もある.
・日本では,1957年の1例を最後に発生は報告されていない.
B臨床症状
・感染後1~2週間(多くは12~14日)で,突然の発熱や頭痛,倦怠感を伴って発症する.
・典型的な皮疹は,発症後数日で体幹上部から始まり全身に広がるが,通常顔面,手掌や足底にはみられない.
・発疹は癒合傾向のない紅斑から点状出血を伴う紫斑へと広がっていく.
・意識障害や昏睡,けいれん,神経局所症状などがみられることもある.
・予後は患者背景によって異なる.死亡率は高齢者や低栄養では高くなり,無治療では60%に至るとの報告もある.
・潜在的に持続感染し,ストレスや免疫低下によって初感染の数年後に再発することがある(Brill-Zinsser病).発熱や皮疹など初感染と類似の症状がみられるが,軽症である.
C診断
・流行地域への渡航歴のある患者の発熱や皮疹などの症状で疑う.
・臨床検体からの病原体分離,遺伝子検査や血清を用いた補体結合反応,間接酵素抗体法による抗体検出で診断する.病原体分離が確実な方法であるが,R. prowazekiiはP3以上の実験室で行う必要があるため,現実的には難しい.
・本疾患は4類感染症であり,診断したら直ちに最寄りの保健所に届ける.
◆治療方針
β-ラクタム系薬は無効であり,テトラサイクリン系の抗菌薬投与と全
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