今日の診療
治療指針

レジオネラ症(在郷軍人病) [■4類感染症]
legionellosis(Legionnaires' disease)
長谷川直樹
(慶應義塾大学教授・感染症学)

頻度 あまりみない(毎年2,000例前後報告されている)

GL成人肺炎診療ガイドライン2017

GLJAID/JSC感染症治療ガイド2019

治療のポイント

・細胞内寄生菌であり,細胞内移行性が良好な抗菌薬を用いる.

・重症肺炎では,本疾患の可能性を否定しないで探索を続け,適宜本症をカバーする抗菌薬を選択する.

・感染源を特定できる場合には,その対応を考慮する.

◆病態と診断

A病態

・レジオネラ属菌は湖沼などの自然界の常在菌で,アメーバなど細胞内で増殖する好気性の桿菌である.病院などの給湯系,風呂場などにも常在する.多数の菌を含むエアロゾルを吸入することにより感染,発症する.

・高齢,喫煙,アルコール依存,免疫抑制状態などはリスク因子である.

・病型としてポンティアック熱(肺炎を呈さず発熱と頭痛を呈する)と肺炎がある.

・ヒトからヒトへの感染はないとされる.

・肺炎の潜伏期は2~10日で,先行する上気道炎症状に乏しく,比較的咳・膿性喀痰が少ない.

・呼吸器症状のほか,神経症状(意識障害など),消化器症状(下痢など)を呈することがある.

B診断

・塗抹・培養検査:グラム染色で染色されず,通常の培地で発育しないため,本疾患を疑った場合にはヒメネス染色BCYE-α培地を用いることをあらかじめ微生物検査室に伝える.

尿中抗原検査:レジオネラ ニューモフィラの血清型としてはⅠ型が80%を占めるが,15の全血清型およびレジオネラ ボゼマニ,レジオネラ デュモフィを検出できる尿中抗原検出キットが2019年に実用化された.

・遺伝子検査:核酸増幅法(PCR法,LAMP法など)による検出キットも実用化されている.

・胸部画像では多彩な陰影を認めるが,非区域性に広がるすりガラス陰影とその周囲のconsolidationは特徴的とされる.

・検査値では,CRPの著増,LDの上昇,電解質異常(低P血症,低Na血症)などを認めること

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