今日の診療
治療指針

肺炎球菌感染症 [■5類感染症-全数把握]
pneumococcal infection
柳原克紀
(長崎大学大学院教授・病態解析・診断学)

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◆病態と診断

A病態

・肺炎球菌はレンサ球菌に属するグラム陽性球菌で,しばしば菌体が向かい合わさった双球菌,あるいはレンサ状として観察される.

・多くの病原因子が知られ,本菌が産生する酵素の1つであるニューモリシンは,菌体外に分泌されて細胞や組織の融解にかかわる.本菌がもつ莢膜は,宿主免疫細胞の貪食から逃れるのに役立つ.莢膜は血清型分類ならびにワクチン利用の面でも重要であり,莢膜多糖体の抗原性により90種類以上の血清型が確認されている.

・主な感染症は,肺炎や,中耳炎,副鼻腔炎などの呼吸器感染症であるが,より侵襲的な病態である髄膜炎,血流感染症などの無菌部位から本菌が検出される侵襲性肺炎球菌感染症(IPD:invasive pneumococcal disease)を起こす.

・IPDは5類感染症(全数把握)であるため,診断した際は7日以内に保健所へ届け出る.

B診断

・感染巣から採取した喀痰などの膿性検体のグラム染色で典型的なグラム陽性の双球菌を認めた場合には,本菌感染症を推定できる.本菌を培養検査で分離同定することで確定診断となる.

・補助診断として,尿あるいは咽頭ぬぐい液・喀痰を材料とするイムノクロマト法による肺炎球菌抗原検査が利用でき,簡便かつ迅速な診断として有用である.特異度は高いが,偽陰性があるため,結果の解釈には注意する.

・血流感染症を疑う場合には,血液培養検査で分離を確認する.通常の方法で診断できない場合には,PCR法などの遺伝子検査での検出が行われることがある.

Cペニシリン耐性肺炎球菌

・ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP:penicillin-resistant Streptococcus pneumoniae)の薬剤耐性機序は,ペニシリン結合蛋白の変異に伴う薬剤への親和性低下である.ペニシリンのみならず多くのβ-ラクタム系抗菌薬に対して耐性となる.

・ペニシリ

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