今日の診療
治療指針

破傷風 [■5類感染症-全数把握]
tetanus
成田 雅
(沖縄県立南部医療センター・こども医療センター・感染症内科部長)

頻度 あまりみない

治療のポイント

・プライマリ・ケアにおいて,追加接種を含めたワクチン未接種者に接種勧奨する.

・外傷者において破傷風傾向創(tetanus prone wound)の評価を適切に行い,ワクチンもしくは免疫グロブリンの投与を検討する.

・本症が疑われた場合,全身状態の管理を念頭に集中治療医への相談を早期に行う.

◆病態と診断

A病態

・自然界に広く分布する破傷風菌(Clostridium tetani)は芽胞を有する偏性嫌気性グラム陽性桿菌で,破傷風は芽胞が皮膚の創を介して侵入し増殖することにより生じる.

・ワクチンで予防可能な疾患である.感染症法では5類に属し,全数把握疾患として7日以内に届け出が必要となる.

・日本国内では年間100名が発症し(2021年では93例),5~9名が死亡している.全身性破傷風(generalized tetanus)の場合,致死率は10~20%に及ぶ.

B症状

・破傷風菌が産生する神経毒素による.産生された毒素が血行性・リンパ行性に拡散し,脳,脊髄,末梢運動神経終末,交感神経を含む神経系が脱抑制され,破傷風の臨床症状を呈する.潜伏期間は平均10日間(3~21日).

・初期症状として顔面の筋けいれんによる開口障害痙笑(顔面筋のけいれんにより笑っているようにみえる)をきたし,嚥下困難や喉頭けいれんをきたす.呼吸筋強直による呼吸障害,四肢体幹筋の硬直けいれん(後弓反張)がみられることもある.

・自律神経機能障害によるバイタルサインの変調,発汗などがみられる.

・臨床型は全身性,局所性,頭部に分けられるが,80%以上が全身性破傷風であり,ほかの臨床型から全身性へ移行することもある.

・ハイリスク者はワクチン未接種者,10年ごとの追加接種未接種者である.

C診断

・臨床診断による.細菌学的,血清学的診断は困難で,培養検査の感度・特異度は低いため用いられない.

◆治療方

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?