今日の診療
治療指針

麻疹(はしか) [■5類感染症-全数把握]
measles(rubeola)
尾内一信
(川崎医療福祉大学特任教授・子ども医療福祉学科)

頻度 あまりみない

ニュートピックス

・本邦ではWHOの麻疹排除認定(2015年)後,麻疹排除状態を継続している.

・近年麻疹の輸入例が問題となっていたが,新型コロナウイルス感染症流行の影響で海外との交流が減ったため,麻疹罹患者報告数は2020年13例,2021年6例と過去最低を更新した.

治療のポイント

・特異的な治療はなく,罹患者に対しては対症療法が主となる.

・曝露後72時間以内の麻しん含有ワクチン接種には,発症予防の可能性がある.

◆病態と診断

A病態

・麻疹は,パラミクソウイルス科モルビリウイルス属の麻疹ウイルスによって引き起こされる急性熱性発疹性感染症である.自然宿主はヒトのみである.

・麻疹ウイルスの血清型は単一であり,1960~70年代に開発されたワクチン株は現在の流行株に対しても有効な抗体を誘導できる.

・感染経路は空気感染,飛沫感染,接触感染で,その感染力はきわめて強い.

・体内に入った麻疹ウイルスは,免疫細胞に感染し全身のリンパ組織を中心に増殖し,一過性に強い免疫機能抑制状態を生じるため,合併した別の細菌やウイルスなどによる感染症が重症化する.

・麻疹に対して免疫をもたない者が感染した場合,10~12日間の潜伏期を経て発症し,カタル期,発疹期,回復期へと至る.

・カタル期:38℃前後の発熱が2~4日間続き,倦怠感があり,上気道炎症状と結膜炎症状が現れる.乳幼児ではしばしば下痢,腹痛を伴う.発疹出現の1~2日前に頬粘膜の臼歯対面に,コプリック斑が出現する.発疹出現後2日目の終わりまでに急速に消失する.

・発疹期:カタル期の発熱が1℃程度下降したあと,半日くらいのうちに再び高熱が出て,発疹が耳後部,頸部,前額部より出現し,翌日には全身に拡がる.高熱は3~4日間続く.発疹ははじめ鮮紅色扁平であるが,融合して不整形斑状となる.指圧によって退色し,一部には健常皮膚面を残す.発疹は次いで暗赤色

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