今日の診療
治療指針

感染性胃腸炎 [■5類感染症-定点把握]
infectious gastroenteritis
大路 剛
(神戸大学大学院准教授・感染治療学)

ニュートピックス

・COVID-19の一部は消化器症状で発症することが報告されている.したがって,ほかの感染症の流行状況によって鑑別が必要である.

◆病態と診断

・患者から得られる診断の根拠となる情報源は病歴・自覚症状などの患者由来情報,患者および術者のスキル依存の身体所見由来の情報,臨床検査,画像検査,生理検査などの検査所見情報の3種類である.

・患者由来情報については完全に患者に依存してしまうが,感染性腸炎では病歴聴取が最大のカギとなり,野外での行動歴や海外渡航歴を確認する.

・上部消化管症状としては,嘔吐や嘔気,下部消化管症状としては,蠕動に伴う腹痛や下痢症がみられる.症状の組み合わせから,次のように原因が推測される.

1)上部消化管症状が中心の場合:黄色ブドウ球菌やセレウス菌(Bacillus cereus)による毒素型食中毒,ノロウイルス,サポウイルスやアストロウイルスによる胃腸炎

2)下部消化管症状が中心の場合:腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus),コレラ菌(V. cholerae),病原性大腸菌

3)上部消化管症状と下部消化管症状の両方が混在:ノロウイルス,ロタウイルス(Rotavirus)やランブル鞭毛虫(Giardia Intestinalis

4)主に全身症状で消化管症状が少ない場合:腸チフス(下痢症は少ない),エルシニア腸炎

5)下部消化管症状+発熱など全身症状:カンピロバクター(Campylobacter)属,サルモネラ(Salmonella)属,赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)などによる大腸型下痢症をメインとするもの

・病歴聴取のポイントとしてはシックコンタクトの確認が最も重要である.摂食歴,生活歴や行動歴がポイントとなる.

1)1週間以内の生の獣肉(鳥刺や牛生レバーなど)の摂食歴:カンピロバクター属,サルモネラ属,病

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?