今日の診療
治療指針

流行性耳下腺炎(ムンプス,おたふくかぜ) [■5類感染症-定点把握]
mumps(epidemic parotitis)
石黒信久
(北海道大学病院・感染制御部部長)

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ニュートピックス

・ムンプス難聴は2万人に1人の発症といわれていたこともあったが,ムンプス罹患患者の追跡調査に基づき1,000人に1人の発症とする報告がある.

治療のポイント

・臨床的に有効な抗ウイルス薬や特異的治療法はなく,対症療法が中心となる.

・ムンプスワクチン接種による感染予防が重要である.

◆病態と診断

A病態

・パラミクソウイルス科に属するムンプスウイルスによる全身感染症である.

・伝播経路は,飛沫感染および唾液を介する接触感染である.

・基本再生産数(感受性者100%の集団において1人の患者が何人に感染させるかを表す数字)は,4~7もしくは11~14とされ,風疹(7~9)や水痘(8~10)と同程度である.

・耳下腺炎の発症直前から発症5日後までのウイルス排出量が多い.学校保健安全法では,耳下腺,顎下腺または舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過し,かつ全身状態が良好になるまで出席停止とされている.

・14~21日(通常16~18日)の潜伏期を経て,発熱,倦怠感,頭痛,食欲不振などの前駆症状のあと,疼痛を伴う唾液腺腫脹(通常は耳下腺)を主訴として発症する.

・耳下腺炎は通常は片側から発症し,70%は両側性に移行する.耳下腺腫脹は7~10日以内に消失する.

・約3割程度の不顕性感染が存在する.年齢が高くなるほど不顕性感染率が低下して,顕性発症率が高くなる.

・成人がムンプスを発症すると小児よりも重篤な症状を示す.

・ムンプスの再感染はまれではないと考えられている.

B合併症

無菌性髄膜炎:ムンプス患者の半数以上に髄液細胞数の増加を認めるとされているが,実際に髄膜炎症状を認めるのは10%未満である.耳下腺炎発症後3~10日で髄膜炎を発症するが,耳下腺炎を伴わない場合もある.一般的には後遺症を残さずに自然寛解する.

・脳炎:ムンプス患者の0.02~0.5%に合併する.約1/3は耳下腺炎を伴わ

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