今日の診療
治療指針

伝染性紅斑 [■5類感染症-定点把握]
erythema infectiosum
金森 肇
(東北大学大学院講師・総合感染症学)

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治療のポイント

・特異的な治療法やワクチンはないため,対症療法を行う.

◆病態と診断

A病態

・伝染性紅斑はヒトパルボウイルスB19による感染症で,小児を中心にみられる流行性の発疹性疾患である.

・日本では頬がリンゴのように赤くなることからリンゴ病,米国では平手打ちされたような頬(slapped-cheek rash),第5病(fifth disease)といわれる.

・数年おきに流行がみられ,春先から夏にかけて患者数が増加する傾向がある.主に幼児および学童期の小児に流行がみられるが,成人の地域流行も報告されている.

・ヒトパルボウイルスB19はヒトのみに感染し,感染経路は飛沫感染および接触感染である.1/4程度は不顕性感染である.

・通常,一度感染すると終生免疫が得られるが,免疫不全者では感染が持続することがある.

・症状は通常軽度であり,発熱,鼻水,頭痛,発疹などがある.

・頬に発疹が出現する前に,感冒様症状がみられる.

・典型的には,感染後10~20日の潜伏期間を経て,両頬に境界鮮明な蝶形紅斑が出現し,続いて腕,脚に両側性にレース様の紅斑が広がる.

・成人では多彩な症状を呈し,診断が困難なことがある.

・関節痛・関節炎は,小児より成人,男性より女性に多いとされる.関節痛は通常1~3週間続き,数か月以上続くこともあるが,通常は長期的な問題とならずに治癒する.

・妊婦がヒトパルボウイルスB19に感染すると胎盤感染が起こり,流産や死産の原因となりうる.

・合併症としては,鎌状赤血球症などの溶血性貧血患者での一過性骨髄無形成発作,免疫不全患者での慢性感染による赤芽球癆,妊婦に感染した場合の胎児水腫などが知られている.ほとんどは合併症を起こすことなく自然に回復する.

B診断

・流行状況および臨床症状を考慮し,EIA法によるヒトパルボウイルスB19 IgM抗体の上昇,ペア血清によるIgG抗体の有意な

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