今日の診療
治療指針

MRSA感染症 [■5類感染症-定点把握]
methicillin-resistant Staphylococcus aureus infections
光武耕太郎
(埼玉医科大学国際医療センター教授・感染症科・感染制御科)

頻度 よくみる

GLMRSA感染症の治療ガイドライン改訂版2019

ニュートピックス

・バンコマイシンなど治療薬物モニタリング(TDM)が必要な薬剤に関して,2022年4月に日本化学療法学会・日本TDM学会による「抗菌薬TDM臨床実践ガイドライン2022」が発刊された.

治療のポイント

・バンコマイシンは幅広い適応症をもつが,感染臓器と抗菌薬の特徴を踏まえて薬剤を選択する(肺炎でのリネゾリド,菌血症におけるダプトマイシンなど).

・感染巣(ソース)コントロール(カテーテル抜去や排膿など)が重要である.

・血液培養陽性例では,血液培養の陰性化を確認する.

◆病態と診断

A病態

・MRSAは,病院内での感染症のみならず市中感染(皮膚軟部組織感染症,菌血症など)の原因菌でもある.従来の院内型MRSAに対して,市中感染型MRSAが菌血症を含むMRSA感染症原因菌の6~7割を占めるようになっている.

B診断

・血液や,膿瘍などの感染巣から採取した検体での培養検査・薬剤感受性試験によって診断する.血液培養は1セットのみ陽性であっても原因菌の可能性が高い.

・喀痰(吸引痰)からの検出のみでは必ずしも肺炎の原因菌とはいえない(単一菌として検出,酸素飽和度が90%以下などの場合は有意なことが多い).

◆治療方針

 ソースコントロール,適切な抗MRSA薬の選択と用法用量,十分な投与期間が重要である.特に菌血症例では,血液培養の陰性化確認と心エコー(感染性心内膜炎のチェック)を実施する.

A菌血症・肺炎・骨/関節その他の深部臓器感染症

1.バンコマイシン

Px処方例

 バンコマイシン塩酸塩注 初回負荷25mg/kg,その後1回15~20mg/kg 1日2回 点滴静注

注意 投与速度が速いとヒスタミン遊離によるレッドマン症候群(頸部や上半身の紅斑性発疹)をきたしやすいので,1gを1時間以上かけて投与する.利尿薬やNSAIDs,アミノ

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?