今日の診療
治療指針

不明熱 [■その他]
fever of unknown origin(FUO)
笠原 敬
(奈良県立医科大学教授・感染症センター)

頻度 情報なし

ニュートピックス

・保険診療では診断困難な感染症について,検査が可能な施設を紹介する「先進的感染症検査マップ(IDMAP)」が公開されている.

・2018年4月から,高安動脈炎などの大型血管炎の診断におけるFDG-PET検査が保険適用となっている.2022年8月時点では不明熱への保険適用はないが,大血管炎や人工物感染,膿瘍,悪性腫瘍などの有無の診断に有用と考えられる.

治療のポイント

・不明熱はさまざまな疾患の集合体であり疾患によって治療が異なるので,「不明熱の治療」というものは存在しない.

◆病態と診断

A定義

・不明熱は1961年にPetersdorfとBeesonらが定義した(表1).これらの定義に対して,その後数回にわたり修正が提案された.しかし実際にこのような厳密な定義が必要とされることは少なく,実臨床では「自施設で可能な範囲で調べたが確定診断がつかず発熱が持続する状態」と表現するのが妥当であろう.

B病態

・「発熱がある」ということと「診断が不明である」ということは本来分けて考えるべきである.不明熱の原因として①感染症,②悪性腫瘍,③膠原病が有名であるが,診断方法や疾患定義の変遷により,不明熱の原因も変化している.

C診断

・定義に述べたように,自分ができる医療面接や身体診察,臨床検査の範囲で診断できる疾患と診断できない疾患を見極め,診断できない疾患については専門医へコンサルトすることが重要である(表2).

・感染症の除外のため,胸部X線,尿検査,血液培養の3点を行う.この3種類の検査は,侵襲性が少なく実施できること,および呼吸器感染症,尿路感染症,菌血症の主要な細菌感染症を診断できることが理由である.

・一般細菌検査を行う場合,抗菌薬の前投与歴は必ず確認する.全身状態に余裕があれば抗菌薬を数日中止してから細菌培養をとり直す.抗酸菌や嫌気性菌,一部の真菌や細菌(レジオネ

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