今日の診療
治療指針

ノカルジア症 [■その他]
nocardiosis
小宮幸作
(大分大学准教授・呼吸器・感染症内科学)

頻度 あまりみない

◆病態と診断

A病態

・放線菌類(actinomycetes)は,好気性放線菌と嫌気性放線菌に分類される.好気性ではノカルジア(Nocardia)属によるノカルジア症,嫌気性ではアクチノマイセス(Actinomyces)属による放線菌症(actinomycosis)が代表的な感染症である.

・ノカルジア属は,土壌や水系など環境中に広く存在するグラム陽性桿菌で,80種類以上の菌種が知られており,ヒトには約30種類が病原性を示すとされている.

・ノカルジア症は細胞性免疫が低下した宿主に生じやすいが,約30%は健常者に発症している.

・ノカルジア症は急性から慢性経過で発症する化膿性肉芽腫性疾患であり,肺ノカルジア症,皮膚ノカルジア症,播種性ノカルジア症に分類される.

・肺ノカルジア症が最も多く,発熱,呼吸困難,咳嗽など非特異的な症状を呈する.肺気腫などの構造破壊が既存の場合に生じやすく,結節や浸潤影など多彩な画像所見を呈する.時に空洞を伴うことがあり,肺結核や非結核性抗酸菌症との鑑別が困難な場合がある.

・ノカルジアは神経組織への親和性が高いため,脳膿瘍など神経系に病変をきたしやすいという特徴がある.

N. cyriacigeorgicaN. novaN. farcinicaが原因のことが多く,N. farcinicaは薬剤耐性率が高い.

B診断

・難治性肺炎の原因の1つとして,本症を挙げておく必要がある.

・確定診断にはノカルジア属の検出が必要であるが,発育が緩徐であるため2週間以上の長期培養を要する場合がある.

・グラム染色で分岐した菌糸を認める場合,本症を疑う契機になる.嫌気性放線菌であるアクチノマイセス属でも同様の所見を呈するが,ノカルジア属は弱抗酸性を示すためKinyoun染色で赤く染まる特徴がある.一方,通常の抗酸菌染色でも染色されるため,特に胸部画像陰影にて空洞を呈

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