頻度 あまりみない
治療のポイント
・イヌ,ネコ,ネズミ,ウサギによる咬傷またはひっかき傷により発症する.
・咬傷・ひっかき傷の既往がなくノミに媒介されることもある.
・蜂窩織炎,肺炎,髄膜炎,敗血症など多彩な病態を呈し,死に至ることもある.
・咬傷部の膿や血液検体を培養するかPCR法により原因菌を同定する.
◆病態と診断
A病態
・動物に咬まれることなどにより,菌が体内に侵入することによって発症する.
・イヌの過半数は,カプノサイトファーガ感染症の原因菌であるCapnocytophaga属菌,パスツレラ感染症の原因菌であるPasteurella属菌を口腔内に保有している.
・ネコではPasteurella属菌は常在菌であり,Capnocytophaga属菌も半数以上で保有している.また子ネコでは,猫ひっかき病の原因菌であるBartonella henselaeを保有している.
・ドブネズミやクマネズミは,口腔内に鼠咬症の原因菌であるStreptobacillus moniliformisやSpirillum minusを保有する.
・ノウサギの調理やマダニの刺咬によってFrancisella tularensisに感染し,野兎病を発症する.本邦ではきわめてまれな疾患となったが,自然界でこの菌はいまだ維持されているものと考えられる.
・上記以外の黄色ブドウ球菌や嫌気性菌の関与も多いとされる.
・動物咬傷で破傷風を発症することが報告されている(→,「破傷風」の項参照).
B診断
・いずれの疾患もイヌやネコなどに咬まれた既往が診断の決め手になる.
・カプノサイトファーガ感染症は発熱,倦怠感,腹痛,頭痛などで発症する.重症例では敗血症や髄膜炎などにより急速に悪化し,死亡することもまれではない.血液培養,髄液培養やPCR法により診断する.
・パスツレラ感染症は発熱,局所の発赤,腫脹,疼痛が出現する.エサを口移しで与え
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