今日の診療
治療指針

伝染性単核球症 [■その他]
infectious mononucleosis
宮崎泰可
(宮崎大学教授・呼吸器・膠原病・感染症・脳神経内科学)

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治療のポイント

・基本的には自然回復する疾患であり,対症療法が中心となる.

・伝染性単核球症の患者では,皮疹の原因となるためペニシリン系薬は使用しない.

・脾腫を伴う場合には,接触などにより脾破裂を起こすリスクがあるため,発症後1か月程度は激しい運動を控える.

◆病態と診断

A病態

・主に唾液を介してEBウイルス(EBV:Epstein-Barr virus)がB細胞に初感染する.その後,T細胞による過剰な免疫応答によって症状が出現する.

・10代以降の若年成人に多く,発症までの潜伏期は30~50日である.小児期までに初感染した場合には不顕性感染が多い.

・サイトメガロウイルス(CMV)やヒト免疫不全ウイルス(HIV),ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6),トキソプラズマなどの感染症でも類似の病態を呈する.

・伝染性単核球症の患者では,溶血性貧血,再生不良性貧血,血栓性血小板減少性紫斑病,溶血性尿毒症症候群などの血液系の合併症や,ギラン・バレー症候群など神経系の合併症が報告されている.その他,粘膜浮腫による上気道閉塞(1%)や脾破裂(0.5~1%)など,頻度は低いが重篤な合併症もある.

B診断

発熱,咽頭痛,頸部リンパ節腫脹が3徴候である.

・異型リンパ球の出現を伴うリンパ球増多や肝逸脱酵素の上昇がみられる.

抗EBV抗体価〔VCA(virus capsid antigen)IgM抗体陽性,EBNA(EBV nuclear antigen)IgG抗体陰性〕で診断する.VCA IgMは発症後4~8週で消失する.

・腹部超音波検査で脾腫の有無を確認する.

・抗菌薬を必要とする細菌性咽頭炎(A群溶血性レンサ球菌など)との鑑別を要する.

◆治療方針

 伝染性単核球症は自然回復するため,対症療法が中心となる.発熱や咽頭痛に対しては,アセトアミノフェンもしくは非ステロイド性抗炎症薬を使用する.咽頭痛が

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