今日の診療
治療指針

サイトメガロウイルス感染症 [■その他]
cytomegalovirus(CMV)infections
千酌浩樹
(鳥取大学教授・臨床感染症学)

頻度 情報なし(成人)

頻度 あまりみない(新生児)

治療のポイント

・宿主の免疫能(正常か免疫抑制状態か)と,感染様式(初感染か再活性化・再感染か)によって,さまざまな病態をとる.病態ごとに治療開始のタイミングや内容を選択する.

・抗ウイルス療法の開始時には,末梢血あるいは罹患臓器の組織学的な検索などによる活動性CMV感染の証明が重要である.

・抗サイトメガロウイルス薬には,特有の副作用があることを熟知しておく必要がある.

◆病態と診断

A病態

・サイトメガロウイルス(CMV)はヒトにのみ感染するヘルペスウイルス科の一種で,ヒトに初感染後,生涯にわたり潜伏感染し,宿主の免疫抑制などで再活性化を起こす.

・CMV初感染時は,免疫正常者ではほとんどが無症候の不顕性感染であるが,時に伝染性単核球症様の症状を起こす.免疫抑制状態では,初感染,再活性化ともに,肺炎,脳炎,大腸炎など,各種臓器の重篤な感染症を惹起することがある.

B診断

・血清学的診断としては,CMV IgGが既往感染の診断に,CMV IgMが初感染・再活性化の診断に用いられるが,感度は十分ではない.

原因不明の発熱患者ではCMV感染症を鑑別診断として考える.CMV再活性化の指標として,末梢血を対象にCMV抗原血症検査(CMVアンチゲネミア法)や,CMV-DNA血症検査(リアルタイムPCR法)が用いられる.

・罹患臓器の生検や細胞診材料に対する組織学的検索(感染細胞の検出)として巨細胞封入体(フクロウの目)の検索なども有用である.

◆治療方針

A免疫正常状態患者の治療

1.初感染

 無症状者への治療適応はない.CMVによる伝染性単核球症様疾患は自己限定的な疾患であり,一般的には抗ウイルス療法の適応はない.

2.再活性化

 免疫正常者においても,ICU入室患者,敗血症など重症疾患罹患者,糖尿病,腎不全などの基礎疾患のある患者ではCMV再活性化が起こりうる

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