今日の診療
治療指針

原虫症,寄生虫症 最近の動向
丸山治彦
(宮崎大学大学院教授・寄生虫学)

◆病態と診断

A学会での主なトピックス

 寄生虫症関連の学会として,2022年5月28~29日に第91回日本寄生虫学会大会(大会長:帯広畜産大学原虫研究センター 河津信一郎教授)が帯広市で,2022年6月18日に第33回日本臨床寄生虫学会大会(大会長:獨協医科大学埼玉医療センター 春木宏介教授,大会のテーマは「再グローバル化における臨床寄生虫学」)が東京の国立国際医療研究センターで開催された.

 このなかで注目すべきは,臨床寄生虫学会大会で発表された,駒木-安田加奈子博士(国立国際医療研究センター研究所熱帯医学・マラリア研究部)による「高原虫血症の重症熱帯熱マラリアで迅速診断法(RDT)が偽陰性!」という演題である.これは,感染赤血球率が7%を超える重症熱帯熱マラリアの症例において,迅速診断キット(BinaxNOW Malaria)の結果が,T2(マラリア原虫共通抗原を検出)では陽性だったにもかかわらずT1〔熱帯熱マラリア原虫に特異的な抗原であるPfHRP2(histidine rich protein 2)を検出〕では陰性だった原因を探ったものである.偽陰性の原因は,なんとあまりにも血中PfHRP2濃度が高すぎたため,抗原捕捉用の抗体と発色用抗体がどちらも遊離抗原で飽和してしまい,T1バンド上で[捕捉抗体:抗原:発色用抗体]の複合体が形成されなくなったことであった(→図解).改めて,迅速診断キットは補助的検査法であり,その結果を絶対的な診断根拠にするべきではないことが認識された.

B疾患

1.アメーバ赤痢

 感染症法で届出対象となっている寄生虫症5疾患(エキノコックス症,マラリア,アメーバ赤痢,クリプトスポリジウム症,ジアルジア症)のうち,一貫して届出数が最も多いのはアメーバ赤痢である.感染症法が施行されて以来届出数は増加傾向を維持し,2013年に1,000例を超えると2017年ま

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