今日の診療
治療指針

病原性アメーバによる感染症(赤痢アメーバ症およびアカントアメーバ角膜炎)
diseases caused by amebic pathogens(amebiasis and Acanthamoeba keratitis)
渡辺恒二
(国立国際医療研究センター病院・エイズ治療・研究開発センター専門外来医長(東京))

頻度 割合みる(赤痢アメーバ症)

頻度 あまりみない(アカントアメーバ角膜炎)

ニュートピックス

・赤痢アメーバ症の診断として汎用されていた「血清抗赤痢アメーバ抗体検査(間接蛍光抗体法)」が,試薬製造中止に伴い,2018年以降,保険診療での検査不能となった.一方,2021年7月に,「糞便迅速抗原検査(赤痢アメーバQUIK CHEK)」が,新たに保険適用となった.

治療のポイント

‍ (赤痢アメーバ症)

・侵襲性アメーバ赤痢に対する治療は,メトロニダゾール投与に加えて,残存シストに対してのパロモマイシン投与を行う.無症候性持続感染者に対しては,パロモマイシン投与を行う.

‍ (アカントアメーバ角膜炎)

・内科医が対応できることは少ない.感染部位の切除以外に有効な治療法がなく,失明のリスクも高いため,すみやかに眼科専門医へ紹介する.

◆病態と診断

A赤痢アメーバ症

・早期診断には問診が重要である.発展途上国への渡航歴に加え,男性同性間の性的接触,性風俗店での勤務歴やその利用歴,知的障害者施設への入所などの感染リスクを同定する.

・以下に示す通り,感染者の臨床像は多彩である.

1.無症候性持続感染

・経口摂取したシスト型赤痢アメーバは,大腸粘膜表面のムチン層に存在する.

・回盲部や上行結腸など,口側結腸に病変が限局した場合には,無症候性持続感染となりやすい.

・糞便直接検鏡検査により,シスト型赤痢アメーバを同定することで診断されるほか,国内では下部消化管内視鏡検査で偶発的に診断される例が増えている.

2.アメーバ性腸炎

・直腸近くに病変が及ぶ場合,粘血便やしぶり腹など,激烈な症状をきたす.

・従来,糞便直接検鏡検査が保険適用内で可能な唯一の検査であったが,診断の精度は検査者の技量に大きく左右される.一方,2021年7月には,イムノクロマト法による糞便迅速抗原キット「赤痢アメーバQUIK CHEK」が,保険適用となった

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