頻度 あまりみない
Ⅰ.マラリア
◆病態と診断
A病態
・マラリアは熱帯・亜熱帯地域(特にサハラ以南のアフリカ)で流行しており,日本国内では流行していない.日本国内では輸入症例として年間約20~60例が報告されている.
・マラリアを引き起こす病原体はPlasmodium属の原虫であり,熱帯熱マラリア(Plasmodium falciparum),三日熱マラリア(P. vivax),四日熱マラリア(P. malariae),卵形マラリア(P. ovale)が知られていた.最近,サルマラリアの原虫(P. knowlesi)のヒト感染例が報告されている.
・マラリアはハマダラカによる蚊媒介感染症である.
・1~4週間ほどの潜伏期間をおいて,発熱,悪寒・戦慄,頭痛などが出現する.
・熱帯熱マラリアは腎障害や意識障害を起こし重症化しやすい.
B診断
・血液塗抹標本をギムザ染色し,光学顕微鏡でマラリア原虫を検出する.重症度の判定のためには,原虫の赤血球寄生率を算出する.
◆治療方針
治療方針は,合併症のないマラリアと重症マラリアに分けて考える.治療の効果判定は,マラリア原虫の消失および発熱などの臨床症状の改善をもって判断する.
A合併症のないマラリア
Px処方例 マラリア原虫の種類や赤血球の感染率に応じて,下記のいずれかを用いる.
1)アルテメテル・ルメファントリン(リアメット薬)配合錠 1回4錠(体重に応じて1回量が異なる) 1日2回 食後 計3日間 熱帯熱マラリアに用いられることが多い
2)アトバコン・プログアニル(マラロン薬)配合錠 1回4錠(体重に応じて1回量が異なる) 1日1回 食後 計3日間
3)メフロキン(メファキン薬)錠(275mg) 初回3錠,6~8時間後に2錠(体重に応じて用量が異なる) 食後 日本国内では30kg以上の成人のみに適応がある
Px使い分けのポイント
・熱帯熱マラリアの場合には1)や2)
関連リンク
- 治療薬マニュアル2023/(合剤)アルテメテル・ルメファントリン《リアメット》
- 治療薬マニュアル2023/(合剤)アトバコン・プログアニル塩酸塩《マラロン》
- 治療薬マニュアル2023/メフロキン塩酸塩《メファキン》
- 治療薬マニュアル2023/プリマキンリン酸塩《プリマキン》
- 治療薬マニュアル2023/アトバコン《サムチレール》
- 治療薬マニュアル2023/アジスロマイシン水和物《ジスロマック》
- 今日の治療指針2023年版/ウイルス性出血熱 [■1類感染症]
- 今日の治療指針2023年版/腸管出血性大腸菌感染症 [■3類感染症]
- 今日の治療指針2023年版/ボレリア感染症(回帰熱,ライム病) [■4類感染症]
- 新臨床内科学 第10版/2 マラリア
- 今日の小児治療指針 第17版/リケッチア感染症,Q熱
- 今日の小児治療指針 第17版/腸チフス,パラチフス,その他サルモネラ感染症
- 今日の小児治療指針 第17版/リステリア感染症
- 今日の小児治療指針 第17版/マラリア