今日の診療
治療指針

消化管・泌尿生殖器寄生の原虫症
intestinal and urogenital protozoan diseases
森本浩之輔
(長崎大学熱帯医学研究所特定教授・呼吸器ワクチン疫学)

治療のポイント

・症状は非特異的であり,病原体を正しく診断し治療することが肝要である.

・難治例においては,高用量の薬剤や国内未承認薬の使用が必要な場合もあり,専門医へのコンサルトが望ましい.

Ⅰ.ジアルジア症(ランブル鞭毛虫症)

頻度 あまりみない

◆病態と診断

・ランブル鞭毛虫による小腸や胆道系の感染症である.

・国内感染例もあるが,亜急性に経過する旅行者下痢症の原因として重要.

・糞便中に排出された感染性嚢子の経口摂取によって感染が成立する.

・下痢(しばしば脂肪性下痢),腹痛,鼓腸,食欲不振を呈する.一般に血便はみられない

・1~2週間で自然治癒するが,一部は慢性型に移行する.

・有形便では嚢子を,下痢便や十二指腸液では栄養型を顕微鏡検査で確認する.

◆治療方針

 メトロニダゾールを第1選択として使用するが,海外で薬剤耐性が増加していることに注意する.

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

1)メトロニダゾール(フラジール)内服錠(250mg) 1回1錠 1日3回 5~10日間

2)チニダゾール錠(500mg) 1回4錠 1回のみ保外

3)アルベンダゾール(エスカゾール)錠(200mg) 1回2錠 1日1回 5日間保外

4)パロモマイシン(アメパロモ)カプセル(250mg) 1回2カプセル 1日3回 5~10日間保外

Ⅱ.クリプトスポリジウム症

頻度 あまりみない

◆病態と診断

・クリプトスポリジウムは約40種が報告されているが,ヒトへの感染はCryptosporidium hominisC. parvumが95%以上を占める.

・排出されたオーシストを経口摂取することで感染する.感染性が強く,塩素消毒に耐性であるため,療養施設やプールなどで集団感染が生じる.

・AIDSなど免疫不全患者において重症化,慢性化する.

・激しい水様性下痢,腹痛,嘔吐,倦怠感がみられる.一般に血便はみられない

・特に免疫不全

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