頻度 あまりみない
治療のポイント
・リーシュマニア症は,内臓型・皮膚型・粘膜皮膚型の3型に大別され,その病態ごとに治療法が異なる.
・内臓型はしばしば致死的な経過をとるため,早急に治療を開始する.
・皮膚型は軽症のものは経過観察・局所療法で軽快することもあるが,南米で流行する原虫種によるものは粘膜皮膚型に進展することがある.
◆病態と診断
A病態
・リーシュマニア症は,Leishmania属原虫による慢性寄生虫感染症であり,サシチョウバエにより媒介される.Leishmania属原虫は,20種類以上が報告されており,感染した原虫種により多彩な病型を呈する.顧みられない熱帯病(NTDs:neglected tropical diseases)として,中南米,アフリカから中近東,欧州,アフリカ,インドと世界中に分布している.病型は,内臓型,皮膚型,粘膜皮膚型に大別される.
・内臓型は,南アジア,中東諸国,アフリカ,南米に分布する.症状は,発熱・肝脾腫が特徴であり,しばしば下痢も呈する.進行すると致死的な経過をたどる.
・皮膚型は,結節や潰瘍などの皮膚病変を呈する.アジア,地中海沿岸,アフリカで流行する原虫種と南米で流行する原虫種が異なり,後者は粘膜皮膚型へ進展することがある.粘膜皮膚型は,初期症状は皮膚型と変わらないが,鼻や唇,口蓋などの粘膜に病変をきたし,鼻翼・鼻中隔・口唇の欠損,鼻出血,呼吸困難,嚥下困難をきたし,細菌の2次感染を合併して死亡する場合もある.
B診断
・病型,感染地域のほか,感染した原虫の種類により治療方針は細かく分類される.
・内臓型・皮膚型ともに,顕微鏡的に病変中の原虫を検出する寄生虫学的診断が有用である.内臓型では骨髄・脾臓・リンパ節,皮膚型では潰瘍性病変の周辺部の生検が有用とされる.補助的に血清学的診断が行われる.また,PCR法などの遺伝子学的検査は感度・特異度が高い.