今日の診療
治療指針

鉤虫症
hookworm diseases
宮里悠佑
(橋本市民病院・総合内科副医長(和歌山))

頻度 あまりみない

治療のポイント

・海外の第1選択薬であるアルベンダゾールは国内では保険適用がなく,保険適用のあるピランテルパモ酸塩を用いて治療する場合が多い.

・治療の奏効率は報告によって幅があるため,糞便での治癒確認検査が推奨される.

◆病態と診断

A病態

・経皮的に感染した鉤虫(hookworm)の小腸での寄生により,腹痛,下痢などの症状や好酸球増多,鉄欠乏性貧血などの病態を起こす疾患.無症状病原体保有者も存在するが,多数の虫体が感染した場合,有症状となりやすい.

・ズビニ鉤虫(A. duodenale),アメリカ鉤虫(Necator americanus)がヒトの腸管に寄生する鉤虫として有名であるが,セイロン鉤虫による感染症も近年報告が認められる.ズビニ鉤虫のみ経口感染を起こしうるが,ほかの鉤虫は経皮感染を起こす.

・ヒトを終宿主としないブラジル鉤虫(A. braziliense),イヌ鉤虫(A. caninum)はヒトの腸管に寄生できないため,フィラリア型幼虫の経皮感染により皮膚幼虫移行症を起こしうる.

B診断

・日本国内での発症はまれであり,流行地(セイロン鉤虫はインド,東南アジア,パプアニューギニア,ほかの鉤虫はサブサハラアフリカ,東南アジア,中南米)への渡航歴土壌への曝露(地面や草原に寝転がるなど)を聴取することが診断に重要である.

・確定診断には糞便や十二指腸液の直接検鏡で鉤虫卵を同定する.検査感度を上げるため,飽和食塩水浮遊法を推奨する専門家がいる.また,鉤虫種の同定には消化管内視鏡検査などにより確認された成虫の形態からの識別や幼虫の遺伝子解析などが有用である.

・皮膚幼虫移行症では前述の曝露歴に加えて,皮膚局所を線状に蛇行する特徴的な発赤と強い皮膚瘙痒感が診断の手がかりとなる.

◆治療方針

 抗寄生虫薬を使用して鉤虫を駆虫することがメインであるが,病態によって治療法が異なる.

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